混戦必至、フィリピン大統領選
Japan In-depth / 2021年9月24日 0時0分
9月15日、「国際刑事裁判所(ICC=本部オランダ・ハーグ)」はフィリピン政府による麻薬犯罪捜査に関する人権侵害の疑いでの本格的捜査の開始を許可した。
これはドゥテルテ大統領が2016年の大統領就任以来特に力を入れてきた政策の一つである麻薬犯罪対策で、捜査・摘発の現場で警察官による司法手続きを無視した容疑者の射殺いわゆる「超法規的殺人」が「人道に対する罪、人権侵害」であるとの欧米社会、人権団体、キリスト教組織などからの指弾を背景に、ICCが予備調査に乗り出したのだった。
これに反発したドゥテルテ大統領は2019年にICCを脱退し、以後「ICCの捜査権はもはや脱退で存在しない」としてICCへの一切の協力を拒否してきた経緯がある。
今回のICCの本格捜査着手についても「ICCには一切協力しない。関係者のフィリピン入国も拒否する」(9月16日、大統領首席法律顧問サルバドール・パネロ氏)と強硬姿勢を貫いている。
大統領在職中の「超法規的殺人」や反ドゥテルテを掲げるメディアへの弾圧などが退職後に非難を浴びたり、ICCのような法的訴追を受ける可能性を回避したりするためには権力の中枢に影響力を残す必要があり、それが副大統領候補としての出馬という奇手の背景であり動機であると一般的には理解されているのだ。
▲写真 反ドゥテルテ大統領デモに参加する市民 フィリピン・マニラ(2021年7月26日) 出典:Photo by Ezra Acayan/Getty Images
■党内対立の激化も表面化
こうした中、9月19日に与党「PDPラバン」の一部会派が会議を開催して、党の大統領候補に同党所属でプロボクサーのマニー・パッキャオ上院議員を指名、パッキャオ氏もこれを受諾して、大統領候補になったのだった。
パッキャオ氏は6階級制覇も成し遂げた世界的なプロボクサーでフィリピンでは「国民的英雄」として知名度、人気は高く、各種世論調査でも常に上位となっている。
大統領候補指名を受けたパッキャオ氏は「私はリングの中でも外でもファイターであり、戦う準備はできている」として大統領選への意欲を示した。
▲写真 WBAウェルター級チャンピオンのマニーパッキャオ(左)とWBAウェルター級スーパーチャンピオンのキースサーマン(右)ネバダ州ラスベガスで開催されるMGMグランドガーデンアリーナにて(2019年7月19日) 出典:Photo by Ethan Miller/Getty Images
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