中国不動産バブル崩壊の本質
Japan In-depth / 2021年9月25日 12時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・中国恒大集団、倒産の危機は避けられない。
・不動産バブルが弾ければ、習政権の存続に影響。
・不動産バブルの主因は、中央から地方へ派遣されたエリートの実績づくり。
昨今、中国の大手不動産会社、「中国恒大集団」のデフォルトの危機が叫ばれている。同社は約33兆円の負債を抱えているという(「阿里巴巴(アリババ)集団」と共にサッカーチーム「広州FC」を経営)。今年(2021年)8月、同社の創業者、許家印がトップの座から退いた。
さすがに、習近平政権は同社のデフォルトを看過できず、支援の構えを見せている。とりあえず、北京政府が当面、償還期限の迫っている利払いを肩代わりするかもしれない。そこで、マーケットには一時、楽観論も広がった。
だが、“自転車操業”をしている「中国恒大集団」がその場しのぎでデフォルトを回避しても、結局、倒産の危機は避けられないだろう(ここ数日、香港での株価が2.81香港ドル<約40円>を下回っている)。
同じく、中国不動産会社の大手、「SOHO中国」も左前となっている(香港での株価が2香港ドル<約28円>前後を推移)。そのトップ、潘石屹の同社売却案件が当局に阻まれ、潘は米国へ逃亡したとの噂が流れたが定かではない。
仮に、この大手2社が倒産すれば、中国不動産バブル崩壊が現実味を帯びると言っても過言ではないだろう(なお、他の不動産会社、碧桂園や万科企業も9月に入り、香港での株価が下落傾向にある)。
周知の如く、2012年秋、習近平政権が誕生して以来、北京政府は「鄧小平路線」(「改革・開放」)を捨て、「混合所有制改革」を打ち出した。同時に、「第二文化大革命」を発動している(最近「第二文革」が“本格化”)。かつての毛沢東的「社会主義路線」へ回帰しては投資や消費が伸びず、経済が傾く事は火を見るよりも明らかではないか。
実際、習近平政権発足後、当局の公表する華々しい数字とは裏腹に、中国経済は、ほぼ右肩下がりである。経済が低迷する中、不動産バブルが弾けたら、習政権の存続自体、危ぶまれるだろう。
さて、1990年代半ば、中国共産党は、国税と地方税の割合、約「45%対55%」から約「55%対45%」へと逆転させた。中央が税の確保を目指したのである。そのため、地方政府は税収が減った。そこで、自ら不動産売買を積極的に行い、税収の不足分を補ったのである。これが、不動産バブルの遠因の一つと考えられよう。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
廃墟タワマンが立ち並び経済苦境は深刻に…追い詰められた習近平政権が世界を敵に回す"禁じ手"とは
プレジデントオンライン / 2024年7月20日 9時15分
-
日本の解き方 デフレ崖っぷちの中国経済 「習体制の失敗」不良債権処理も楽観できず 日本が経済取引で距離を置くべき理由
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月19日 11時0分
-
お金は知っている 不動産に続き〝EVバブル崩壊〟危機 中国の過剰生産に米欧が制裁関税強化 補助金投入で〝猫も杓子も〟簡単に参入、過当競争へ
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月12日 6時30分
-
名門大学を卒業し、出世しても月給7万円…「優秀学生」ほど「汚職官僚」に転落するベトナムの特殊事情
プレジデントオンライン / 2024年7月11日 8時15分
-
失業した若者が階段や公園で行き倒れている…不動産バブルがはじけた中国の「ゾンビ経済」の実態
プレジデントオンライン / 2024年7月5日 8時15分
ランキング
-
1「家族の誰ひとり、事実がわからなかった」息子まで攻撃の対象に…“いじめ告白”記事炎上の日々、小山田圭吾の家族が体験した試練
文春オンライン / 2024年7月24日 6時10分
-
2河川敷で身元不明の遺体 損傷激しく性別も不明 作業中の草刈り機に巻き込まれ発見
KKT熊本県民テレビ / 2024年7月24日 9時28分
-
3堀井学・衆院議員、秘書に「代理で参列しても香典は堀井学個人名に」再三指示…支持拡大図る狙いか
読売新聞 / 2024年7月24日 7時48分
-
4県人口90万人を割り込む 80万人台となるのは104年ぶり
ABS秋田放送 / 2024年7月24日 11時56分
-
5【SNSで人気沸騰】女性総理候補“影の本命”に躍り出た小野田紀美・参院議員の実像 公明の推薦受けずに当選し保守系の自民支持者から喝采
NEWSポストセブン / 2024年7月24日 11時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)