麻薬という最終兵器 「列強の墓場」アフガニスタン その5
Japan In-depth / 2021年9月25日 23時0分
ソ連軍はまた、BMP-1という歩兵戦闘車をアフガニスタンに投入した。装甲兵員輸送車に軽戦車並みの火力を持たせたものと思えばよい。73ミリ低圧砲(発射時の反動が小さいため、車体の大きさに比して大口径の砲を装備できる)と機銃、それに誘導式対戦車ミサイルまで備えていて、1970年代に実戦配備された時は「BMPショック」と呼ばれるほどの衝撃を西側軍事筋に対して与えた。
ところがアフガニスタンにおいては、主砲の仰角が小さすぎて、崖の上から攻撃を仕掛けてくるムジャヒディーンに対抗できないことが明らかになってしまった。こちらもまた、対空射撃も可能な30ミリ機関砲に換装したBMP-2が開発される契機となった。
そもそもアフガニスタンという国は、中央アジアの交通の要衝でありながら、道路などのインフラはまるで整備されておらず、峻険な山岳地帯が国土の多くを占める。
「運転の上手な者が四輪駆動車を操ったならば、地球上の大抵の場所に行ける」
とよく言われていたが、ドイツ製の四輪駆動トラックでさえ、アフガニスタンの悪路には歯が立たなかったと聞く。
ではムジャヒディーンはどうやって補給を確保したのかと言うと、なんとロバを活用したのであった。前述のような悪路でも、ロバならば相当な重さの荷物を背負って踏破できるのだそうだ。
ロバは偉い……いや、これはあながち冗談ごとではなく、たとえば海中の移動速度を考えてみても、最新鋭の原子力潜水艦よりイルカやシャチの方が速い。機械文明もまだまだ自然界の力には及ばない面があることを、我々は自覚すべきである。
話を戻して、ムジャヒディーンとの戦闘から教訓を得たソ連軍は、兵器の改良を重ねることで対応していったが、やがて別の問題に直面することとなった。
駐留軍に、麻薬が蔓延していったのである。
アフガニスタンは世界屈指のケシの産地で、山間部には大麻もたくさん自生している。ケシは阿片、大麻はマリファナの原料だから、いわば麻薬などいくらでも手に入るのだ。
1980年代の終わり頃に、英国の民放が、当時の(崩壊直前ではあったが)ソ連におけるアフガニスタン帰還兵を扱ったドキュメンタリー番組を放送した。将校だったという人物が、制服や勲章、糧食の缶詰などをブラックマーケットで売って、その金で大麻を買っていたと告白した。いわく、
「勲章など惜しくなかったが、缶詰は惜しかった」
別の帰還兵は、
「そもそも米軍がアフガニスタンを侵略するから、これを迎え撃つべく派兵されたはずだったのに、民間人と区別できないゲリラが相手で、早々に士気が下がった」
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