麻薬という最終兵器 「列強の墓場」アフガニスタン その5
Japan In-depth / 2021年9月25日 23時0分
と語っている。
やはりヴェトナム戦争における米軍の二の舞だったか、などと思った。1987年に公開された『プラトーン』という映画で、厭戦気分に取りつかれてしまった米兵たちがマリファナで現実逃避を図るシーンがあり、その記憶が鮮やかだったのだ。
その後ソ連軍は撤退し、タリバン政権が誕生したこと、しかしながら2001年9月11日に米国内で起きた同時多発テロをきっかけに、今度は米軍がアフガニスタンに侵攻した経緯は、ここまで述べてきた通りであるが、実はここにも麻薬がらみの逸話がある。
まずタリバン政権は、ケシの栽培などを規制したが、これは、
「イスラム過激派は<ジハード=聖戦>を唱えているが、その実は麻薬を密売したカネで欧米から兵器を買っている」
「彼らの<死を恐れない戦いぶり>とは、実は麻薬のたまもの」
といったネガティブ・キャンペーンを打ち消す目的であったと見られ、実態はよく分かっていない。ただ、国連の調査によっても、この時期は麻薬の取引量が激減していた。
しかしその後、米軍が侵攻してタリバン政権が倒され、ハーミド・カルザイ大統領が擁立されたのだが、かの地に民主主義を根付かせるはずだったこの大統領の弟であるアフマド・カルザイという人物が、麻薬シンジケートを再興して巨万の富を得ていたのではないか、また、米国寄りの政策をとる見返りに、CIA(米中央情報局)などもそれを黙認していたのではないか、との疑惑が浮上した。
その後米軍は20年に及ぶ泥沼の戦いを強いらることとなる。この麻薬問題が元凶だとまでは言えないであろうが、新政権の腐敗ぶりにアフガニスタン国民が早々と愛想をつかしたことは疑う余地がない。だからこそタリバンも抵抗を続けられたのだ。
アフガニスタンの駐留米軍が麻薬に汚染されたという話は今のところ聞かないが、泥沼化した戦いによって神経症を患う将兵が後を絶たないと言う報告は、だいぶ以前からある。麻薬に手を出した兵士や帰還兵が絶無だったとは考えにくい。
いずれにせよアフガニスタンは、ついに米軍までも追い出して、ますます「列強の墓場」という評価を不動のものとした感があるが、逆の視点から見ておく必要もあると思う。
国民も国際世論も支持しない戦争を強行したならば、どこの国でも「墓場」になり得る、ということではないだろうか。
(その1,その2,その3,その4)
トップ写真:武装したタリバン兵がカブール郊外にいる様子(撮影日不明) 出典:Photo by Per-Anders Pettersson
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