河野元防衛大臣に改革なし
Japan In-depth / 2021年9月29日 12時0分
照井資規(ジャーナリスト)
【まとめ】
・河野元防衛大臣が行った自衛隊内のパワハラ厳罰化施策は成果がない。
・パワハラ厳罰化よりも反抗不服従の処罰の体系化、厳罰化の面の方が大きい。
・実態は「上官がより強制力を発揮しやすくするための罰則」の体系化。
河野元防衛大臣が行った自衛隊内のパワハラ厳罰化施策は成果がないばかりか、部下の隊員による反抗不服従の処罰の体系化、厳罰化の面の方が大きい。実態は「上官がより強制力を発揮しやすくした」罰則の体系化だ。「パワハラ対策」の名の下で進行する反抗不服従の厳罰化は防衛組織崩壊の兆候にすら見える。
パワハラは最悪の人材喪失
ここ10年来人員不足が深刻な自衛隊にとって、パワハラは最悪の人材喪失である。
「指導」の名の元に行われる上官からのパワハラにより、自衛隊ではどれほど多くの人材が失われていることだろうか。筆者は20年間、陸上自衛隊に勤務したが、自殺してしまったり精神疾患などで以前のようには会えなくなってしまった隊員は20名以上にもなる。しかも、どの人も国の宝と言えるほど優秀な人たちであった。
昨年7月14日に北海道を訪れた際、現役の1等陸曹に面談する機会があった。1等陸曹や陸曹長の集合訓練である上級陸曹課程にて「命の雫」裁判となった訓練事故を事例研究として、「指導」の名の元に行われるパワハラや、格闘訓練の場を利用した暴行事件、傷害事件は今後増えていく傾向にあり、その対策を講じるための教育が行われたという。現場の努力の一方で、パワハラを抑止するための体制づくりは今もなお不充分なままだ。
河野太郎行政改革担当大臣は、2019年9月11日、第4次安倍第2次改造内閣において防衛大臣に就任した翌年の20年2月に、パワハラを行った自衛隊員への処分を厳罰化「それまでは自衛隊内で暴力をふるっても、数日の停職で済まされたケースが多かったのですが、被害者に重症を負わせるなどの重大な事案によっては免職にする」すると発表した。
▲写真 防衛大学の卒業式 河野太郎防衛省(2020年3月22日 横須賀) 出典:Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images
詳しくは、報道機関に開示された、防人服(防)第46号「暴行等を伴う違反行為に関する懲戒処分等の基準について(通知)」と防人服第1168号「暴行等を伴う違反行為に関する懲戒処分等の基準についてに規定する人事教育局長が定める考慮事項等について(通知)」(いずれも令和2年1月31日付)にあるもので、それぞれ違反態様別にまとめると3つの表のようになる。
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