河野元防衛大臣に改革なし
Japan In-depth / 2021年9月29日 12時0分
▲表 「防衛省・自衛隊 暴行等を伴う違反行為に関する懲戒処分等の基準について」
総じて言えるのは、表「防衛省・自衛隊パワハラ処分の厳罰化」にあるように、厳罰の適用基準を細分化し処分基準を厳罰化したことは、自衛隊におけるハラスメントと反抗不服従の問題が深刻化している兆候であろう。一般的に自衛官が停職6日以上の処分を受けた場合は、昇級もしなければ異動もできなくなるため、自衛隊人生は終焉を迎えたに等しい。処分を受けた多くの自衛官が、その後の人生の安定を求めて自衛隊に居続けるか、依願退職をして他の人生を目指すかの選択を迫られる。
▲表 「防衛省・自衛隊パワハラ処分の厳罰化」
自衛隊とは減点式の人事評価であり挽回の機会は無い。この人事制度はまた「何も起きないために何もしないこと」という単一の価値観が重視される組織になる元凶ともなっている。故に自衛隊とは挑戦や改革が起きない組織体質となりがちなのだ。このためにパワハラの問題がいつまでも解決されないままでいる。
ハラスメントの懲戒処分の基準では「暴行さえしなければ軽処分」のままである。軽処分では加害者の自衛隊人生には影響が無いため、「殴りさえしなければ何をしても構わない」という現状は改善しない。手を出しさえしなければパワハラとはならないのであるから、長時間正座をさせる、仕事を与えないなど、手口がより巧妙化、陰湿化しており、あまり効果はない。被害者が精神疾患を発症すれば加害者は重処分となるが、精神疾患を発症することは被害者の自衛隊人生の終焉を意味するので、被害者が診断名をつけられることを拒否する事例も多い。パワハラを行う者はこうした境界を意識して巧みにハラスメントを実行しており、一時の感情によるものはあまり見られないものだ。
メディアで報道されなかったが、注視すべきは「上官等及び特別勤務者に対する反抗不服従等」の処分の厳罰化である。自衛官には「上官の命令に服従する義務」があるため、ハラスメントの「免職を基本」に比し「免職」とより厳罰化されている。ハラスメントに名誉毀損が無いのに対し、反抗不服従にはSNSなどによる上官の名誉毀損が定められていることも特徴的だ。
防衛組織は命令と服従で成り立つが、反抗不服従に関して懲戒処分基準の細分化、厳罰化がなされることは、自衛隊内での不服従が横行し始めているのではないか。
筆者が自衛隊に入隊した26年前は、最下層の階級の隊員は年功序列であり在隊日数が1日でも多ければ、同じ階級でも「上級者」であり不本意ながらもその指示に従わざるを得なかったが、そのことが組織の規律を維持している面もあった。現在では陸士の人員構成が複雑となり、30歳の2等陸士、帰化した徴兵制の軍歴のある元外国人の2等陸士も珍しくはない。こうなると単一の価値観では命令と服従の関係を構築することが難しくなる。陸曹の中には人事権を持つ1等陸尉以上には従うが、2等陸尉以下など幹部とも思わずに接している者も少なからずいる。反抗不服従の処分厳罰化は自衛隊の規律の乱れの兆しであるとも言える。
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