“ピンクの波”復活か 中南米左翼再結束へ
Japan In-depth / 2021年9月29日 19時0分
2011年、反米左翼のシンボル的存在だったベネズエラのチャベス大統領の強いイニシアチブで設立された。当時の中南米は資源ブームを背景に各国で左翼政権が支持を拡大、ポピュリズム(大衆迎合主義)に沿った社会主義的政策を相次いで実施し、新たな地域連帯の動きが表面化した。こうした政治のうねりは「ピンクの波」と呼ばれ、反米、反新自由主義、反グローバル化の動きと軌を一にしたものだ。
前述のボリビアのモラレス左翼政権もこの潮流の中で誕生している。しかし「ピンクの波」は2014年ごろの資源ブーム終焉とほぼ時を同じくして退潮したという経緯がある。今回メキシコの呼びかけで、4年半ぶりに開催されたCELAC首脳会議には、キューバのディアスカネル大統領、ベネズエラのマドゥロ大統領ら域内約20カ国の首脳が出席した。中南米の専門家の間では「域内各国首脳が地域の協力と結束のため一堂に会するのはかつての『ピンクの波』のうねりが再び起きる前触れ」(米有力シンクタンクのメキシコ研究者)との見方が出ている。
メキシコのオブラドール大統領は「中南米とカリブ諸国は欧州連合(EU)のような共同体を目指すべきだ」と訴えた。米州の地域協力機関としては米国主導の米州機構(OAS)が存在するが、米国の強い影響力の下にあることに反発や警戒感を抱く国も多く、オブラドール大統領の発言はこのような中南米諸国の空気を反映したものといえる。同首脳会議は、米国の対キューバ経済封鎖解除を求める声明を採択し、新型コロナや気候変動などに関する域内協力で合意した。会議では、ウルグアイ右派政権のポウ大統領がベネズエラやキューバで民主主義が確立されていないと批判したものの、開催国メキシコのオブラドール大統領ら左翼政権首脳の発言が専ら、クローズアップされる格好になった。
■中国が中南米・カリブを積極支援
今度のCELAC首脳会議で中南米専門家の強い関心を引いたのは、中国の習近平国家主席がビデオ・メッセージを送り、CELACとの関係強化を呼びかけたこと。習近平主席はCELACが中南米地域の平和と安定、発展の上で重要な役割を果たしてきたと指摘するとともに、中国としてCELACとの関係をさら発展させることの重要性を強調した。
意外に知られていないが、中国はCELAC発足当初から、この地域協力組織に関与している。2015年には習近平主席の提唱で北京で第1回中国・CELAC閣僚会議が開催され、中南米・カリブ地域の貿易、投資、インフラ建設などで中国が積極的に協力する方針が示された。
▲写真 第1回CELAC-中国閣僚会議(2015年1月8日 中国・北京) 出典:Photo by Rolex Dela Pena-Pool/Getty Images
第2回閣僚会議は2018年にチリの首都サンティアゴで開かれ、「『一帯一路構想』と中南米発展戦略の連携がうたわれた」(中国外交当局者)とされている。メキシコのメディアが同国外務省高官の話として伝えるところによれば、中国は中南米での影響力を維持、拡大する上でCELACを重視しており、習近平主席のメッセージはその表れだという。CELACを通じ中国が中南米との関係をさらに強めていくなら、「ピンクの波」の再現を促すことになるかもしれない。
トップ写真:国連総会で演説するペルー大統領ペドロ・カスティジョ大統領(2021年9月21日 ニューヨーク) 出典:Photo by Mary Altaffer - Pool/Getty Images
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