インド太平洋地域情勢に大きな変化
Japan In-depth / 2021年10月1日 19時50分
もう一つ今週書いたのが、米仏の軋轢である。9月15日のAUKUS創設発表で最も傷付いたのはフランス外交だからだ。豪州は一年近くも前からフランスとの潜水艦開発計画に満足していなかったらしく、超極秘裏に米国の原潜導入を考えていたようだ。しかも、この情報は全く外に出なかった。米英豪の保秘体制は完璧だったのだ。
考えてみれば、この三国は太平洋戦争でも同盟国だった。戦後、連合軍海軍が横須賀港に入港した際、艦隊を率いた一人が豪州海軍の司令官だったことはあまり知られていない。当時豪州海軍は英連邦海軍の一員として太平洋戦争に参戦しており、AUKUS共同声明にもあるとおり、豪英米は「海洋の民主主義国家」なのである。
この点については毎日新聞政治プレミアに詳しく書いた。仏との潜水艦共同開発計画が破棄されフランスは米国と豪州に駐在する仏大使を召還した。その後米仏大統領が電話会談し、共同声明が発表された。この共同声明がとてつもなく面白い、絶妙の「玉虫色」外交文書なのである。ご関心のある向きはこちらもご一読願いたい。
〇アジア
先週末、詐欺罪などで米司法省から起訴されていた華為技術副会長兼CFOの孟晩舟被告が司法取引で釈放され、同時に中国当局が拘束していたカナダ人2人も解放された。分かり易いと言えば分かり易いが、この司法取引で米国は一体何を得たのだろうか。カナダが米国に頼み込んだのか、気になるところだ。
〇欧州・ロシア
26日のドイツ総選挙で中道左派のドイツ社会民主党(SPD)が僅差で勝利、同党首相候補、ショルツ財務相が軸となるそうだ。やはりメルケルなきキリスト教民主同盟(CDU)ではだめなのか。そうは言っても、ショルツ氏だって現連立政権の一員、ドイツがどの程度変わるかで、今後の欧州の流れが変わるだけに要注意である。
〇中東
先週アフガニスタンでターリバーンが誘拐事件の容疑者4人を殺害し、遺体を公の場でつるし「晒し者」したことが問題視されている。うーん、問題であることはその通りだが、あの連中には何故問題なのか理解できないだろうな、と直感した。ターリバーンと言っても一枚岩ではないということだろう。アフガニスタンの混乱は続く。
〇南北アメリカ
連邦議会の共和党はバイデン政権の支出法案に猛反発しており、債務の上限引き上げを含む、繋ぎの予算法案の交渉が進んでいない。このままいくと10月15日ごろにアメリカ政府が財政破綻するそうだ。この危機的内政状況の中でクワッド首脳会議が開かれた。大統領自身が議会対策をやるバイデン政権は大丈夫なのか、心配だ。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは来週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:オーストラリアのスコット・モリソン首相(左)とロイド・オースティン米国国防長官(右)が2021年9月22日にバージニア州アーリントンで開かれた国防総省での会議に出席。オーストラリア、米国、英国は、他の軍事協力に加えて、オーストラリアが原子力潜水艦を開発および配備するのを支援するための安全保障協定(AUKUS)を発表した。 出典:Drew Angerer/Getty Images
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