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円高は悪?日本企業の円高耐性と生産性の関係

Japan In-depth / 2021年10月2日 12時48分

円高は悪?日本企業の円高耐性と生産性の関係




 



神津多可思(公益社団法人 日本証券アナリスト協会専務理事)





「神津多可思の金融経済を読む」





【まとめ】





・円高化の歴史の中で、円高は悪と広く受け止められている。





・購買力平価の考え方からすると、日本円は現在1990年代以降、最も安い圏内にある。





・ 第三国市場での価格競争力を回復していけば、少なくともインフレ率の格差分の円高に対しては耐性を持てるようになるはず。





 





1970年代以降、為替レートは常に日本経済にとって重要な変数だ。そして、これまでの円高化の歴史の中で、円高は悪と広く受け止められている。





■半世紀にわたる円高化の傾向





1971年8月、当時のニクソン米国大統領により、米国ドルの金兌換が停止された。これによって、第2次世界大戦後の国際金融の枠組みだったブレトン=ウッズ体制が崩壊し、その年の12月、ワシントンのスミソニアン博物館での会議で、円ドルの固定相場はそれまでの360円から308円へと変更された。しかしそれも1973年2月までのことで、以来、変動相場制の下で時々刻々為替差相場は動いている。





当時、国際通貨基金(IMF)でもこの変動相場制というのは安定した制度ではないと認識されていたようだ。その後の新しい国際通貨制度を模索する会議の名前は「暫定」委員会と称された。それから約半世紀、固定相場は復活せず、日本経済は時として大きく円高方向に動く為替レートに悩まされ続けてきた。





これまでの傾向的な円高の進行と、加えて時として短期間で大きく円高が進行した経験があるため、日本では円高は悪ということになっている。確かに、日本企業の経営者にしてみれば、業績は円建てで示さなければならないし、利益を出すために製品の製造原価を1円削るのは本当に大変だ。しかし、為替レートは1円くらいすぐ動いてしまう。経営計画で使った為替レートと比べて実績が大きく円高方向に動くことは、本当に勘弁してほしいという気持ちだろう。





■インフレ率格差に見合う円高でも駄目なのか?





それでは、もし例えばドル建ての製品価格を現地のインフレ分、自動的に引き上げることができるとしたら、その程度の円高ではどうだろうか。為替レート決定の考え方に購買力平価というのがある。それによれば、インフレ率の高い国の通貨は安くなり、インフレ率の低い国の通貨は高くなる。同じハンバーガーの価格について考えよう。その価格が、ニューヨークでは毎年5%ずつ高くなるのに対し、東京ではずっと同じだとする。その時、東京では同じハンバーガーを引き続き同じ円価格で食べることができるのに、ニューヨークでは毎年5%円高になっていないと円をドルに交換した上で食べることができない。同じハンバーガーなのだから、大きな価格差が生じることはないだろう。そういう考え方である。それが成立するのであれば、インフレ率に格差がある時には、それを反映して為替レートに変化の力が加わる。









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