英国はまたも傭兵を用いるか 「列強の墓場」アフガニスタン 最終回
Japan In-depth / 2021年10月2日 23時0分
一方、政府軍が崩壊したことにより、米軍から供与されていた多数の兵器がタリバンの手に渡ったのだが、軍事をある程度勉強した人の中から、このことを「新たな脅威」などと憂える声はまず聞かれない。
と言うのは、米国製の兵器は一般に、精度を追求した分、構造がややデリケートで、こまめにメンテナンスを行わないと故障しやすいことが、よく知られているのだ。
1980年代に、ソ連軍の攻撃ヘリがムジャヒディーンの脅威になっていたことから、米軍が多数のスティンガー地対空ミサイルを供与し、戦況を一変させたことも前に述べたが、この時もソ連軍が撤退した後、多くのミサイルがイスラム過激派の諸組織や「友好国」イランに流れた。
しかし、このミサイルは炸薬や推進役の寿命がおおむね製造後10年ほどで、後に米軍がアフガニスタンに侵攻した時点では、あらたか「賞味期限切れ」になっていたのである。
今回タリバンに渡った兵器にしても、中国に流れて、かの国の兵器の性能向上に一役買うのではないか、と見る向きもあるようだが、これまた軍事を多少は勉強した者に言わせれば噴飯ものだ。
夜間暗視装置や通信機材などが、そうした「最新鋭の機材」に該当するらしいが、現在の中国の軍事技術は、一世代前の米国製から学ぶ必要などないレベルに達している。かの国が新兵器として宣伝している物の中に「得意の」無許可コピー品が多数含まれていることも、また事実ではあるが。
それはそれとして、台湾海峡や日本近海を含む西部太平洋における中国の脅威とアフガニスタンの問題とは、やはり不可分の関係にあった。
過去20年間、米国がアフガニスタンの泥沼に足を取られ続けて、膨大な戦費(=軍事予算)を浪費している間に、中国はやはり膨大な国費を軍備の近代化に注ぐことができ、現在の西太平洋における緊張状態は、、そのひとつの結果なのだ。
いずれにせよ、事程左様に戦意に欠けていたアフガニスタン政府軍であったが、例外的に強い部隊も存在した。
SAS(スペシャル・エア・サービス=英国陸軍特殊空挺隊)が訓練した特殊部隊は戦意も練度も高く、最後までカブール空港を守備し、外国人の脱出を支援した。しかもその後、危険を顧みず、すでにタリバンに制圧されつつあったカブール市内に戻り、残存の特殊部隊員とその家族を脱出させ、最後は全員(500名以上と言われる)、英国に亡命したのである。
これを受けて英軍筋では、彼らアフガニスタン特殊部隊を正規の序列に組み込んで、新たな連隊を創設することまで視野に入れていると聞く。
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