英国はまたも傭兵を用いるか 「列強の墓場」アフガニスタン 最終回
Japan In-depth / 2021年10月2日 23時0分
もともと19世紀にインド亜大陸を植民地化した際、英軍はネパールの山岳民族を傭兵として活用した。有名なグルカ兵だ。
山岳民族特有の敏捷さと尚武の気風を兼ね備えているとされ、事実、アジア太平洋戦争においては、マレーやビルマ(ミャンマー)の戦線で、日本軍の脅威となった。『ビルマの竪琴』(竹山道夫・著。新潮文庫他)という小説にも、一番恐ろしいのはグルカ兵だった、との描写がある。
1982年のフォークランド紛争においても、手に手にククリと呼ばれる山刀をかざして突撃し、これを見て浮足立ったアルゼンチン軍は早々と白旗を掲げたとまで言われた。
▲写真 フォークランド紛争に向かうグルカ兵(1982年05月01日) 出典:Photo by Sahm Doherty/Getty Images
冷戦終結後、大幅に縮小されたものの、このグルカ旅団は現在も存続している。また、英軍以外にも、香港やシンガポールの治安部隊に雇用されているようだ。
このように、傭兵を使うことにかけては英軍は年季が入っていると言えるし、今後も同国がイスラム圏と関わりを持って行くとするならば、彼らのようにイスラムの生活文化を理解している兵士たちは、貴重な戦力たり得るのではないか……というように英国防省は考えているらしいのだが、これもいささか眉唾物である。
そもそもイスラム過激派の目に、彼らは裏切り者としか映らないであろうし、タリバンをも「日和見主義者」としてテロの標的にすると宣言している、最過激派IS(イスラム国)相手に、イスラム文化を理解しているなどという話が通用するだろうか。
予算の問題などもあるので、まだまだ早計には言われない事柄ではあるが、19世紀の植民地獲得競争や、20世紀の二度にわたる世界大戦で機能した傭兵戦略が、21世紀の今日でも通用すると考えているとしたら、英国も今度こそ手痛いしっぺ返しを受けることになるのではないか。
アフガニスタンが「列強の墓場」と呼ばれるきっかけとなったのが、シリーズで最初に述べた通り、3次にわたるアングロ・アフガン戦争であったことを忘れているとしたら、救われない話である。
(その1,その2,その3,その4,その5)
トップ写真:北部バグラム空軍基地で検問所の米兵(2001年12月1日 アフガニスタン) 出典:Photo by Scott Peterson/Getty Images
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