河野元防衛大臣に防衛戦略なし
Japan In-depth / 2021年10月6日 21時0分
この中で問題であるのは新型弾道ミサイルで、飛翔距離が750kmであるため西日本が射程に入る。それだけの脅威があるミサイルを政府は当初、落下場所を日本のEEZ(排他的経済水域外)と発表したものの、後になってEEZ内と修正した。これは自衛隊は低高度(50km)で当初は放物線を描き下降途中に再び上昇して目標に命中する低軌道変則飛翔型のミサイルが飛来した場合、ミサイルを見失う可能性がある探知能力の限界、防空上の欠陥を暴露したおそれがあるということだ。しかも今回は貨物列車に偽装した移動式発射台が用いられた。道路を異状に大きなトラックが走行していれば非常に目立つが、貨物列車が線路上を走行することは自然である。また、戦闘時の道路上は様々な車両が混雑するが、線路上の列車は統制が容易であるから、ミサイル発射時の部隊運用も容易に行える。列車による移動式発車台は移動時の偽装と部隊運用が容易であることが脅威の本質である。大型車両による発車台も実際の発射時は森の中に隠し、偽装網などの人工物や草木などの天然の素材で偽装する。しかし、赤外線で空中写真を撮れば、人工物による偽装、刈り取られた草、伐採された木と自然に生えている草木との判別は容易に行える。草の上を走行した轍も同様であり。車両による移動の痕跡を消すことはかなり難しいものなのだ。それならば、平時の貨物列車に偽装してしまう方がよほど簡単との発想の転換によるものだ。
貨物列車で可能であればコンテナ船を洋上ミサイル発射基地に偽装することもできよう。そうなれば、日本列島全部が射程圏内に入ることになる。北朝鮮はより厄介な戦略ミサイルシステムを装備したと言える。さらに、国連の国際原子力機関(IAEA)は8月27日、北朝鮮が核兵器用のプルトニウムを作り出せる原子炉を、再稼働させたとみられると発表した。北朝鮮による核兵器の脅威もまた増している。
弾道ミサイル対処には二の矢を抑える実力の保持が必須
ロシア、中国も極超音速滑空兵器(HGV:Hypersonic Glide Vehicle)は配備済と見られている。極超音速巡航ミサイル(HCM:Hypersonic cruise missile)も近い将来配備されるであろう。現在の弾道ミサイル防衛システムは未来位置を特定できる放物線の弾道であるから迎撃できる。変則軌道はそれができない。そこで必須となるのが敵基地攻撃能力である。初矢を止めることは不可能に近い。しかし、最初の一撃で目的を達成することはできないのが戦闘である。続いて撃てなければ手痛い反撃をされてしまい攻撃の成果よりも被害の方が上回ってしまう。故に北朝鮮が列車発車台を退避させるトンネルの入り口を潰してしまうなど、二の矢を抑える実力があれば先制攻撃を行う意志を抑えることができる。
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