1ドル=360円が変わった日
Japan In-depth / 2021年10月13日 23時0分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・1971年8月15日、アメリカは「ドルと金の交換停止」を突如発表。
・世界の主要通貨は相次いで「変動相場制」に移行した。
・今後の通貨はいずれドル対人民元の勢力争いになりそう。
第二次大戦後の世界の通貨体制は、アメリカのブレトンウッズ会議で合意をみて「ブレトンウッズ体制」と呼ばれていた。アメリカは金1オンスを35ドルとし、35ドルを持ってくれば金1オンスと交換するとしていた。通常の貿易取引などはドルで行なわれていたが、いつでもドルと金を交換することを約束していたわけだ。金との交換の裏付けがあったため、ドルは世界の基軸流通通貨となって貿易取引に使われていたのである。
ところが1971年8月15日に、アメリカは「ドルと金の交換停止」を突如発表した。ベトナム戦争の戦費などでアメリカの財政赤字が膨れ上がり、貿易も日本や西ドイツが輸出競争力を強めてきたため、アメリカは貿易赤字国に転落し、ドルが弱体化していた。この流れを見た各国は、弱くなるドルを持つより金に交換した方が安全と考え、ドルをアメリカに持ち込み金との交換を要請し始めたのだ。アメリカは持ち込まれたドルと金の交換に応じていたが、アメリカの持っていた金準備高は、海外が保有するドルの25%まで減少してきたため、遂に当時のニクソン大統領が突然、金とドルの交換を停止すると宣言したのである。これが有名な通貨のニクソン・ショックだった。
その結果、各企業や個人は金との裏付けが無くなるドルを持っていても損するだけと考え、世界の市場でドル売りが殺到することになる。日本では相場安定のため中央銀行(日銀)がドル売りを買い支えたが、10日後の28日には日本の外貨準備(ドル)がアメリカを上回る規模まで膨らみ、遂に耐えきれず固定相場を放棄。一時的に市場の流れに任せるようになる。
市場が混乱したのは日本だけでなく世界全体も同様となっていたため、世界の市場の混乱を抑えようと、それまで1ドル=360円だった固定相場を日本は1ドル=308円とするが、それでもドル売りは治まらなかった。結局日本も73年に固定相場制を断念。世界の主要通貨は相次いで市場の流れに任せる「変動相場制」に移行したのである。
変動相場制への移行によって市場が国際収支の不均衡を自動調整するようになったが、相場が激しく揺れ動き金融危機が頻発するようにもなってきた。1971年に金・ドル本位の固定相場制が崩壊すると主要通貨が相次いで変動相場制に移行し、市場の乱高下が常態化するようになる。
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