1ドル=360円が変わった日
Japan In-depth / 2021年10月13日 23時0分
今後の通貨体制の焦点は、中国の人民元の行方だ。中国のGDPは2010年に日本を抜きアメリカに次ぐ第二位の経済大国になった。2030年には経済規模でアメリカを抜くといわれ、物価の差を調整すると2017年にすでに逆転したともみられている。中国は広域経済圏構想「一帯一路」の沿線国やアジア太平洋の島しょ国と東南アジア、インド洋諸国にも影響力を急速に強めており、通貨はいずれドル対人民元の勢力争いになりそうだ。
▲写真 中国元(2021年2月20日) 出典:Photo by Yuriko Nakao/Getty Images
第二次大戦前は、イギリスがアフリカ、インド、アジア、オーストラリア、南米、アメリカなどに植民地を持ち、世界の覇権を握っていたことから、英国・ポンドが世界通貨の中心となっていた。しかし第二次大戦でアメリカの支援を受けてからポンドの勢いは衰え、変わってドルが戦後の基軸通貨になった。通貨と国力は密接な関係を持っているのだ。日本のYENは、1970~80年代にアメリカの国力が衰えていた時期にかなりの地域で通用したが、日本のバブルが崩壊し、日本の国力が世界で20位台位の実力まで落ちてしまった現在は、YENの実力はいまや見る影もない。
プラザ合意ではニューヨークのプラザホテルで米・英・独・仏・日本の蔵相、中央銀行総裁が集まり、為替レートの安定化策について基本合意したものの長くは続かなかった。ポンド危機(92年)、メキシコ通貨危機(94~95年)、アジア通貨危機(97年)などが続き、2008年にリーマン・ショックが起きると円は歯止めなく円高に上昇し、2011年にはついに1ドル=75円32銭の最高値をつけるに至った。さすがにその円高は、その後市場で修正されてゆくが、2021年10月13日現在は、1ドル=113円台後半で動いている。
私は1971年に地方勤務を終えてカブト町(証券市場)担当になったが、初めのうちはプラザ合意で円が1ドル=360円から308円に決められた時は、なぜ1ドル=360円から308円になると“円高”と呼ぶのか、その理屈がよくわからずに苦労したことを覚えている。360円から308円になるのは“円安”ではないかと思えたからだ。その後、これまで360円を出して買っていた同じ品物が308円で買えるようになったのだから円の価値が上昇(円高)したのだと気づくまでに、理屈では理解しても人間の皮膚感覚として納得するまでにかなりの時間がかかったことを覚えている。
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