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バイデン政権が供給網混乱を解決できないわけ

Japan In-depth / 2021年10月20日 19時0分

供給網と労働市場の問題は、バイデン政権発足時から繰り返し指摘されてきたことだ。だから、(1)賃上げや待遇改善を行って運輸・配送の人手不足解消に貢献する企業に、大統領令で補助金を出す、(2)連邦政府の管轄下にある港湾の夜間や週末の休業を撤廃し、高賃金で新たな人材を呼び寄せる、(3)物流のボトルネックを引き起こす環境・労働規制を一時的に停止する、(4)製造業や小売業の企業に従業員1人当たりの労働時間延長を要請して供給・流通を改善するなど、物流問題と経済格差問題を一石二鳥で解消するような政策は、いくらでも採用できたはずである。だが実際には、バイデン政権は無策であった。





それだけではない。バイデン大統領が、未曾有である数兆ドル規模の現金給付や財政出動で需要を喚起してアクセルを思いっきり踏み込んだところまでは良いが、それによって生み出された需要に対応するための供給増加の必要性に対しては、米環境保護庁による新たなトラック排気ガス規制、中国メーカーからの車台輸入に対する200%の報復関税の発動、民主党支配州における部分的ロックダウンの継続的な適用や、ワクチン接種命令に服従しないエッセンシャルワーカーをクビにする措置などの一連の規制策や悪いタイミングの発動により、ブレーキをかけてしまったのである。





こうした中、州によってはパン、食肉、乳製品など必需品が不足しており、暖房需要が高まる冬季にエネルギー価格がさらに高騰すれば、インフレと商品の供給不足に悩む米国民の怒りが、経済全体を俯瞰できていない民主党に向かうことは間違いない。政策の構造的なチグハグさが災いして、米経済は巡航速度からの減速を迫られている。





■ 経済減速で利上げは遠のくか





一方、供給不足と労働力不足で生じる物価上昇に関しては、多くのエコノミストが2022年中は継続するだろうと予測している。ちなみに、8月の上昇率は食品やガソリンの値上がりを反映して前年同期比5.4%と、米連邦準備制度理事会(FRB)の「継続して2%を上回る」という目標値を大幅に超過しているように見える。





市場にとっての問題は、インフレが早期に収束するか、しないかだ。米連邦エネルギー情報局によれば、今冬は天然ガス価格が前年比30%上昇すると予想されるほか、電気暖房が6%、プロパンガスが54%、灯油は43%の値上がりが予想される。サプライチェーン問題も冬の前に解消するとは考えられず、食品価格や日用品の値段は、この先数カ月は上がり続けよう。このため、米経済が減速モードに入ることは確実だ。





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