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福島県立医科大学、論文数ランキング躍進のわけ

Japan In-depth / 2021年10月28日 7時0分

彼が福島県の被災地に飛び込んだのは、私が指示したからだ。被災地は若い有能な人材を欲しているし、旧知の仙谷由人元官房長官から「相馬市の立谷市長は人物で、彼が若手医師を求めている」と相談を受けた。立谷市長は、私の予想以上の人物だった。本稿では詳述しないが、東日本大震災からの相馬市の復興の速さはずば抜けていた。コロナ流行では、相馬市は全国でも最も早くワクチン接種を進めた自治体だし、抗体価の測定は相馬市役所の協力なしでは実行できなかった。坪倉教授は、相馬に飛び込み、福島で素晴らしい指導者に巡り会った。そして、多くのことを学んだ。





坪倉教授のことを語る上で、もう一人、忘れてはならない人がいる。竹之下誠一福島県立医大理事長だ。鹿児島県鶴丸高校から、群馬大学医学部に進み、母校の教授選で敗れた後、一兵卒として隣県の福島県立医科大学に転職した。その後、頭角を現し、2017年4月から理事長に就任している。坪倉教授は、竹之下理事長に推され、2020年6月には、福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授に就任している。若干38才の抜擢だ。





東日本大震災からの10年は、立谷市長、竹之下理事長、坪倉教授のような人材の有機的な連携を生み出した。今回のコロナ研究も、彼らの信頼関係があったからこそ、実施できた。実は、このような成功例は、コロナ研究に限った話ではない。





医療ガバナンス研究所は、定期的に国公立大学の臨床研究の生産性を調査している。具体的には、米国立医学図書館データベース(PUBMED)が定義する「コア・クリニカル・ジャーナル」に掲載された臨床論文数を常勤医師数でわった指標を用いて、大学をランキングしている。2009~12年と2016~18年の調査結果の比較を図1に示す。





前者では、50大学中40位だった福島県立医科大学は、2016~18年の調査では、京都大学、東京医科歯科大学、名古屋大学に次ぐ4位に躍進した。中心的役割を担ったチームの一つが、坪倉チームであることは言うまでもない。









▲図1 国公立大学医学部付属病院の所属医師100人当たりの論文数ランキング推移(提供筆者)





余談だが、この間に論文作成の生産性を高めた大学と、低下した大学のランキングを表1に示す。世間一般で言われるブランド大学と、臨床研究力、さらにその勢いとはあまり関係ないことがお分かり頂けるだろう。









▲表1 国公立大学医学部付属病院の所属医師100人当たりの論文数ランキングの躍進と凋落(提供筆者)





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