ペルー左翼政権、早くも大ピンチ 議会と対立激化
Japan In-depth / 2021年10月31日 11時0分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・ペルーで7月末に発足したばかりのカスティジョ左翼政権が議会との対立で重大危機に見舞われている
・カスティジョ大統領にとって与党「ペルー・リブレ」(PL)のセロン党首の主導権争いも痛手
・11月4日に議会で行われる見込みの新内閣の信任投票を乗り切れるかどうかが、当面の焦点
■発足直後からつまずきの連続
「貧困層救済」や「社会格差是正」などを表看板に登場したカスティジョ政権だったが、議会では与党少数派で右派や中道右派政党に牛耳られている。政権発足後わずか2カ月余りで政権の中核であるベリド首相の事実上の更迭を余儀なくされた。ベリド氏は与党PLの中でも急進左派色が強く、過去にテロリストを擁護する発言をしたことなどが議会でやり玉に上げられたためである。これに先立ち8月には、元ペルー共産党員で1960年代の左翼ゲリラ活動家だったベハール外相も過去の問題発言から辞任する事態に追い込まれるなど、新政権はスタート直後からつまづきの連続。ベリド氏の後任の首相には10月初め、他の左派政党の女性リーダーで前暫定国会議長のバスケス氏が任命された。
▲写真 カスティジョ大統領とミーシャ・バスケス首相(2021年10月6日) 出典:Gob.pe
バスケス首相は就任以来、フジモリ元大統領の長女ケイコ氏が党首を務める最大野党の「フエルサ・ポプラル」(FP)はじめ各党との対話を行い、行政府と議会の対立の打開に努めた。ところが10月下旬、議会は大統領の国会解散権限を事実上縮小する内容を盛り込んだ法案を賛成多数で可決した。「実質的な憲法の改定」(ペルー・カトリカ大政治学者)との批判も強く、大統領側は「三権分立のバランスを危うくする立法府の横暴」(バスケス首相)と猛反発、議会の立法措置を憲法違反として憲法裁判所に申し立てるなど、双方の対立は激化の様相を濃くしている。
野党勢力や議会が攻勢に出ている背景には、PLがマルクス・レーニン主義に基づく政党であり、カスティジョ政権が新自由主義経済から転換し、経済への国家の介入を強化するのではないかとの懸念がペルー経済界で強いことが挙げられる。カスティジョ大統領は就任後、経済相に世界銀行勤務の経験のあるエコノミストを起用するなど現実的な経済政策を取る姿勢を強調しているが、首都リマの経営者らの間で不安は消えていない。
■ 新内閣めぐり与党内対立が表面化
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