アラブの石油王と結婚する方法 王家の結婚について その4
Japan In-depth / 2021年11月2日 11時0分
もともとユダヤ教、キリスト教、そしてイスラムは同じ絶対神を信仰しており、総称して「啓典の民」とされている。余談ながらイスラムに「教」を加えないのは、そもそもイスラムとは「教え」の意味で、イスラム教と記すと二重形容になってしまうからだ。
もちろん啓典の民と言っても「温度差」はあって、イスラムにおける唯一の聖典とは『コーラン』で、ユダヤ教の『旧約聖書』については、その倫理観を一部受け容れている、という具合だ。
このため、キリスト教やユダヤ教の信者であるところの女性に関しては、イスラムに改宗せずとも、信者の男性との結婚が認められる。しかし、男性は終生ムスリムでなければならないし、生まれた子供は必ずムスリムとならねばならない。
現にヨルダンの現国王の母上は英国人で、すでに離婚しているが、改宗した形跡はないようだ。
反対に、ユダヤ教やキリスト教の側では、ムスリムを異教徒と見なし、改宗しなければ結婚を認めない。
さらに言えば、同じイスラムでも、中東とアジア・アフリカとでは、信仰の強度と言うか、戒律などに対する「温度差」が見られるようだ。
どういうことかと言うと、ムスリムが圧倒的多数である中東諸国は、ユダヤ人国家であるイスラエルとは戦争を繰り返してきたが、日常生活レベルでは他の宗教との軋轢はなく、自然と寛大な宗教観が根付くようになる。さらには地理的な関係で、19世紀以降はヨーロッパの啓蒙思想、20世紀以降は機械文明に根差した新たな生活文化の影響を受けた。
一方。布教の最前線であった地域では、異教徒に囲まれて暮らさねばならない例も少なくない。コミュニティの結束を固めるためにも、教義により厳格でなければならなかった。結婚にもそれが反映されているということなのだろう。
……今回の記事もまた、若林啓史(京都大学博士(地域研究)氏のご助力があって、はじめて書き上げられた。
前シリーズで、博士が朝日カルチャーセンターで行う「講義:一年でじっくり学ぶ中東近現代史」を紹介させていただいたところ、大好評のうちに終えることができた。10月以降も継続しているので、中東近代史やイスラム圏の生活文化に関心をお持ちの読者は、ぜひともその知見を共有していただきたい。
(続く。その1、その2、その3)
トップ写真:ヨルダン国王フセイン王(1935-1999)とその妻ムナ・アルフセイン王妃(旧姓:アントワネット・アヴリル・ガーディナー)。( 1961年5月25日結婚。1971年12月21日離婚)1961年05月26日 出典:Photo by Central Press/Hulton Archive/Getty Images
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