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中国「不動産税」試験的導入の影響

Japan In-depth / 2021年11月7日 11時0分

中国「不動産税」試験的導入の影響




澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)





【まとめ】





・中国全人代は「不動産税」を一部の都市で試験的に導入を決定。





・中国恒大ら大手不動産がデフォルトの危機に瀕しており、不動産バブルが弾けようとしている





・不動産会社全体で総額約560兆円の債務があると見られる中、「不動産税」導入で不動産価格暴落の可能性も。





 





今年(2021年)10月23日、中国の全国人民代表大会常務委員会は、「不動産税」(日本の固定資産税にあたる)を一部の都市で試験的に導入することを決めた。まずは5年間の試験期間を設けるという。





中国共産党は、この施策で不動産価格の上昇を抑え、「共同富裕」の実現を目指す考えである。 2011年から上海市や重慶市では購入した住宅への課税(一種の財産税)を先行して実施してきた。ただ、両市では「土地使用権」(借地権)は課税の対象外となっている。





よく知られているように、中国の土地は国有ないしは公有である。したがって、今度の「不動産税」は、「土地使用権」と同時に、建物などへの課税となる。





一般に、住宅用「土地使用権」は70年、工場や商業施設の「土地使用権」等は、40年から50年と定められている。期限が切れれば、中央政府や地方政府に土地を返還しなければならない。そのため、中国人富裕層は日本をはじめ、海外で(原則、永久保有の)不動産を購入しようとする。





ただ、今度の政策導入には時期的に問題があるのではないか。現時点で、中国恒大をはじめ、花様年、中国地産、佳兆業など、大手不動産がデフォルトの危機に瀕している。今まさに不動産バブルが弾けようとしていると言っても過言ではない。





野村ホールディングスの試算によれば、中国不動産会社全体で、総額5兆米ドル(約560兆円)の債務を持つ(『ウォール・ストリート・ジャーナル』「恒大以外にも、中国不動産業者に560兆円負債」2021年10月11日付)という。このような微妙な時期に、突然「不動産税」を導入したら、不動産価格の暴落を引き起こす可能性があるだろう。





ちなみに、中国恒大をめぐって、建設がストップしたマンション購入者らは、返金を求めた。それに対し、政府は公安や武装警察を投入して、恒大を守る構えを見せている(中国では、常に政府は企業に味方する)。





さて、中国共産党最大の失政は、「改革・開放」以後、社会主義を謳いながら、「共同富裕」実現を真摯に目指さなかった点にあるだろう。





鄧小平は「先富論」を唱え「先に豊かになる者は豊かになれ」と号令をかけた。これ自体、決して間違いではなかったと思われる。





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