中国共産党100年史とアメリカ その2 米側知識人が共産党を助けた
Japan In-depth / 2021年11月10日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国共産党は、今は敵視するアメリカに育てられた歴史もある。
・少数勢力だったが、アメリカ人の支援により世界に認知された。
・米のジャーナリスト、作家、学者が、共産党を好意的に伝えた。
しかし歴史の皮肉ともいえる事実がある。中国共産党はこんな対決の相手のアメリカ側によって国際的に励まされ、育てられた時代もあったのだ。中国共産党側が熱心にアメリカの官民の支援を求めた時代も早くからあったのである。
結党してまもなく、中国の国内でも国民党政権に抑圧される少数勢力だった共産党は、まず数人のアメリカの言論人や作家の支援により世界規模での幅広い認知を得るようになったのだ。
中国共産党の側からもその種のアメリカ人たちに巧妙な手段でアプローチし、熱心に交流を深めた。自分たちを知ってもらい、好意的な認識を持ってもらおうという努力を続けたのだ。
アメリカ側でのそうした歴史上の人物たちに光をあててみよう。
中国共産党の草創期にアメリカ側で重要な役割を果たしたのはまずジャーナリストのエドガー・スノーだった。
スノーは中国共産党結党からまだ7年目の1928年に中国に渡り、新聞や雑誌の記者として活動を始めた。やがて共産党幹部とも接触し、1930年代には共産党の当時の本拠地の西安にも招かれるようになった。
スノーは毛沢東、周恩来という共産党指導者とも親交を深めて、彼らを好意的に取り上げた本『中国の赤い星』を1937年に出版した。
この本は世界的な関心を集め、中国共産党は貧しい人民のために富裕な国民党政権や日本帝国軍と戦う清潔で進歩的な政治勢力として描かれたイメージを全世界に広げる結果となった。
中国社会を人間的な視点で描写したアメリカ人女性作家のパール・バックの影響も巨大だった。
▲画像 賞を受けるパール・バック氏 出典:Photo by Getty Images
キリスト教の宣教師の父の下、幼児時代から中国で育ったバックは高等教育こそアメリカで受けたが、作家活動をちょうど中国共産党の誕生期の1920年代から南京などで始めた。
中国を熟知した背景からのバックの小説『大地』は1人の中国人男性が貧農から富豪になる波乱の一生を語りながら、当時の中国の社会や人間を温かく描いた作品だった。共産党に直接、触れる部分は少なかったが、中国の労農階層の実態や革命の素地を活写していた。
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