南シナ海で中国艦艇、比輸送船に放水
Japan In-depth / 2021年11月19日 18時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・フィリピン船への放水を中国は「法の執行」と正当化している。
・ASEAN各国は南シナ海の対中外交で課題を抱えている。
・フィリピンの新政権に中国は揺さぶりをかけ、動きが活発化するのではないか。
中国が一方的に海洋権益を主張して周辺国との間に領有権問題が起きている南シナ海で11月16日、自国の排他的経済水域(EEZ)にある軍の拠点に物資輸送に向かっていたフィリピンの輸送船に対して中国の艦艇がその進路を妨害し、放水銃による放水をしていたことが明らかになった。フィリピン政府は中国に対して抗議したが、中国は「自国の管轄圏内での法の執行」としてその行動を正当化している。
フィリピン南部パラワン島西方海域に位置する南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)にあるアユンギン礁(中国名・仁愛礁)のフィリピン海兵隊の拠点に物資補給のために向かって航行していたフィリピン軍が雇用した民間輸送船2隻が中国海警局の船舶3隻にアユンギン礁手前の海域で進路を妨害され、放水銃による放水を受けた。
▲写真 紛争海域で中国の民兵と沿岸警備隊による嫌がらせを受けたにもかかわらず、西フィリピン海に向けて漁に出る準備する漁民ら(フィリピン・ルソン島西部、バターン島マリブルズ 2021年5月18日) 出典:Photo by Jes Aznar/Getty Images
このため輸送船は一部が破損してフィリピンの港へ戻ること余儀なくされたという。
■ 海兵隊が座礁船を拠点に常駐
アユンギン礁はフィリピンのEEZ内に存在する岩礁で1999年にフィリピンが海軍艦艇の「シエラ・マドレ」を座礁させてそこに海兵隊員が常駐する形での「実効支配」を続けており、定期的に食料品などの物資補給が行われている。
中国はアユンギン礁を含めた南沙諸島を「自国の海洋権益が及ぶ範囲」として無人の島や岩礁を埋め立てたり拡張したりして滑走路や港湾施設、レーダーサイトなどの軍事施設や宿泊施設などの建設を進め「基地化」を一方的にこれまで進めてきた。
しかし、アユンギン礁にはフィリピン海兵隊員が常駐していることから「直接の手出し」をすることができず、補給のための輸送を妨害するなどの「いやがらせ」をこれまで続けてきている。
■ 比外相の抗議に中国は反論
今回の「進路妨害と放水」という中国海警局船舶による行為に対して、フィリピンのテオドロ・ロクシン外相は「中国はこの海域で自国の法を執行する権利はなく、今回の行為は違法である。中国によるこうした自制心の欠如はフィリピンとの2国間関係を脅かすものだ」としたうえで「最も強い表現で怒りと非難を伝えた」と中国に強く抗議したことを明らかにしている。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
やりたい放題、中国海警局 台湾漁船を拿捕 フィリピン公船を追跡・監視 バイデン政権弱体化で増長「既成事実つくりで攻勢」
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月3日 15時15分
-
「海賊行為」とフィリピン軍激怒 中国海警局との衝突の映像を公開へ 対立深まる南シナ海
乗りものニュース / 2024年6月26日 11時42分
-
南シナ海、一段と「天気晴朗なれど波高し」、中国の「攻撃的行動で兵士重傷」と比側
Record China / 2024年6月21日 13時0分
-
中国、領海侵入で最長60日拘束 法施行、日本など周辺国に危機感
共同通信 / 2024年6月14日 15時51分
-
フィリピン、中国海警局が医療搬送妨害と非難 5月に南シナ海で
ロイター / 2024年6月7日 18時2分
ランキング
-
1河野太郎氏、やから発言釈明 「言葉の選び方は慎重に」
共同通信 / 2024年7月3日 20時0分
-
2潜水艦修理契約で不正か=川崎重工、海自に金品提供疑い―防衛省
時事通信 / 2024年7月3日 19時51分
-
3知床沖観光船沈没事故で乗客家族らが損害賠償を求め運航会社と桂田精一社長を提訴「亡くなられた家族と残された家族の尊厳の問題」
北海道放送 / 2024年7月3日 18時5分
-
4横浜患者連続死、無期確定へ=東京高検が上告断念
時事通信 / 2024年7月3日 16時28分
-
5旧優生保護法の違憲判決を受け加藤こども政策担当相が今後の対応を発表
日テレNEWS NNN / 2024年7月3日 23時9分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください