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枠組み交渉よりも政治アジェンダが注目 COP26の評価と課題 その1

Japan In-depth / 2021年11月22日 11時33分

• パリ協定の温度目標(1.5℃~2℃)を再確認。1.5℃上昇に抑えれば2℃上昇に比して気候変動影響は低くなることを認識し、1.5℃上昇に抑制するよう努力することを決意(resolve)

• 1.5℃に温度上昇を抑制するためには2030年の全世界のCO2排出を2010年比45%削減し、今世紀半ばにネットゼロにすることを含め、迅速で深掘りした温室効果ガス削減が必要。

• そのためには共通だが差異のある責任、異なる国情、持続可能な開発、貧困撲滅を反映しつつ、2020年代の「勝負の10年」(critical decade)に行動を加速することが必要。

• 国別目標(NDC)に関する統合報告書では2030年に2010年比13.7%増となるとされていることを懸念。

• 締約国が排出削減に向けた努力を増大させることが緊急に必要。「勝負の10年」における緩和の野心向上と実施をスケールアップするための作業計画を立ち上げ、2022年のパリ協定第4回締約国会議(CMP4)で採択

• NDCをアップデートしていない国はCMP4までに提出を求める

• 締約国に対し、必要に応じ、パリ協定の温度目標に準拠して2022年末までに自国のNDCを見直し、強化することを求める

• 事務局に対し、毎年、NDCに関する統合報告書をアップデートすることを要請

• プレ2030年の野心に関する年次ハイレベル閣僚会合を開催(2022年~)

• 長期戦略を提出していない国はCMP4までに提出を求める

• 事務局に対し、長期戦略に関する統合報告書の策定を求める





パリ協定では「産業革命以降の温度上昇を2度を十分下回るレベルに安定化させ、1.5℃に抑えるよう努力する、そのために今世紀後半にカーボンニュートラルを目指す」と規定されているが、ここでは最も野心的な温度目標である1.5℃をハイライトし、その達成のためには2030年に2010年比45%削減が必要なのだが、現在の各国のNDCでは14%程度増えてしまうので、締約国に対し、抜本的な野心レベルの引き上げのための作業計画を来年合意する、パリ協定の温度目標に準拠してNDCを来年末までに強化する、という流れになっている。





2℃目標ですら達成の軌跡に乗っていないのに、目標を厳しくするというのは、普通に考えればミッション・インポッシブルだと思えるのだが、そういう議論が通用しないのがCOPの世界である。会場の雰囲気は圧倒的に「Keep 1.5 alive」であった。昔、帝国陸軍では威勢の良い意見ばかりが取り上げられ、実現可能性を考えた現実的、慎重な意見は「因循姑息」と退けられた。東条英機は「戦争は負けたと思ったものが負けたのである」と言い、戦局悪化を認めようとしなかった。1.5℃をめぐる議論を聞いているとそんなメンタリティを感じさせる。





しかし目標引き上げの掛け声ばかりあげても現実が変わるわけではない。1.5℃の条件となる2030年45%減はインド、中国がピークアウトではなく、今から排出量を削減しない限り絶対に不可能だが、当たり前に国益を最優先する彼らがそんな自爆的な目標見直しをするわけがない。グラスゴー気候協定は「1.5℃追求に合意した歴史的合意」とされているが、1.5℃目標の破綻は数年もせずに誰の目にも明らかになるのではないか。





(その2に続く。全2回)





トップ画像:11月13日、COP26の閉会式で挨拶し拍手を受けるアロック・シャルマCOP26議長 出典:Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images




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