「1票の格差」こそが問題(下) 似て非なる日英「二大」政党制 その5
Japan In-depth / 2021年11月26日 11時0分
これは「法の下での平等」を定めた日本国憲法14条に違反するとして、1960年代から選挙のたびに違憲訴訟が提起され、違憲判決も出されてきた。
だが、裁判所としては、三権分立の原則とのからみもあって、これまで「選挙のやり直し」を命じた例はない。今次の総選挙に際しても、弁護士らが全国で一斉に訴訟を提起すると報じられたが(NHKニュースサイト11月1日付などによる)、選挙結果を覆せると本気で期待している人など、まずいないだろう。
▲写真 総選挙の投票数を数えている様子(2021年10月31日、東京) 出典:Photo by Carl Court/Getty Images
ここで再び英国を例に取らせていただくが、かの国では5年に一度、選挙区の区割りが見直されており、できるだけ人口比とリンクさせる工夫がなされている。
さらに言えば、英国下院の議員定数は650で、我が国の衆議院の定数465よりもかなり多い。ここでは、英国の人口が日本の半分くらいであることも考慮すべきだろう。
よく、英国の単純小選挙区制について、今風に言えば「オワコン」扱いする人も見受けられるのだが、かの国の政治史をそれなりに勉強してきた者の目には、そのように決めつけるのは早計ではないか、と映るのである。
話を戻して、我が国における1票の格差の問題に対して、どのような解決策があるだろうか。
きわめて単純化するなら、比例代表制に統一してしまえばよいのだが、選挙区の区割りは政治家にとっては死活問題であるから、現実的な案とは言えないだろう。それよりなにより、乱立が加速して、どの党が勝っても政権運営が不安定にならざるを得ず、今度は逆に地方の声が国会に反映されにくくなる、といった弊害が考えられる。
そこで次善の策というか、あくまでも私案であることを明記しておくが、いっそ大選挙区制に回帰してはどうだろうか。
これまで中選挙区制と表記してきたが、政治学的な定義に従えば、ひとつの選挙区から1名だけ当選者が出るのは小選挙区制、2名以上なら大選挙区制とされるので、我が国の選挙制度も、広義には大選挙区制だったのである。
具体的には、47都道府県をそれぞれひとつの選挙区として、できるだけ人口比に沿った定数を割り振る。こうすることで1票の格差を極小化するのだ。
全体の議席数については、詳しくシミュレーションしてみないと断定的なことは言えないのだが、何度も言うように1票の格差を極小化する前提で考えると、議席数をもう少し増やすことも考えてよいのではないか。
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