岸田新政権へのアメリカの反応は その1 中国への政策の曖昧さ
Japan In-depth / 2021年11月30日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・アメリカは岸田新政権の中国への対応に注目している。
・ 安倍路線を継承し、クアッドを重視する岸田首相の姿勢はアメリカ側も歓迎している。
・ 一方でワシントンでの岸田氏自身の知名度は未だ低い。
岸田文雄新総理の下に新しい政権がスタートした。さてこの日本の新政権を同盟国のアメリカはどうみるのか。ワシントンの各界の関係者たちに意見を尋ねてみた。
「岸田文雄首相は経済政策が曖昧でスローガン倒れの観がある。それ以上に中国への政策が曖昧だ。『中国との安定した関係』とはなにを意味するのか」
ワシントンの日米関係に詳しい識者たちに岸田新首相への評価を問うと、経済戦略研究所(ESI)所長のクライド・プレストウィッツ氏からはこんな答えが返ってきた。
プレストウィッツ氏は1980年代のレーガン政権では商務長官の特別顧問として日本との通商交渉にあたり、タフ・ネゴシエイターとして知られた。日本の官僚と政治家の関係にも詳しい日本研究の長老である。
プレストウィッツ氏がとくに批判をにじませて強調したのは岸田氏の中国への姿勢に対する疑念だった。プレストウィッツ氏自身、近年は中国や米中関係の著書も出している。
ワシントンではやはり中国への懸念が強い。だから日本の新政権でもその外交政策はどうかとなると、まず中国への姿勢のいかんを問うのは自然だといえよう。
だが岸田政権の登場自体へのアメリカ側の反応となると、わりに平穏、自然体とも呼べる感じである。この反応はバイデン政権が今年10月4日に出した公式声明にも集約されていた。
「バイデン大統領は岸田首相の選出に祝意を送る。日米首脳はこの機に改めてインド太平洋と世界の平和、安全、安定の礎石である米日同盟の強固さを確認する。クアッド(日米豪印4ヵ国の対話)を含む自由で開かれたインド太平洋への共通の構想推進での米日両国が果たす決定的な役割を考えてバイデン大統領はとくに今後の長い年月での対日関係の強化を期待している」
当然、予測された建前のような紋切り型のホワイトハウスからの声明ではある。だがその語句は現状の維持と継続というアメリカ側の岸田新首相への期待を素直に表明したといえる。
このへんの事情をプレストウィッツ氏は次のように解説した。
「ワシントンの専門的な考察者たちはバイデン政権のアジア政策担当官も含めて岸田政権を安倍晋三政権路線の継続とみる感じだ。とくに岸田氏のクアッドの重要性の強調を歓迎している」
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