アメリカが鳴らす尖閣危機への警鐘
Japan In-depth / 2021年12月3日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米国防総省報告書、中国側の20年からの尖閣攻勢激化を強く警戒。
・同諸島が日米安全保障条約第5条の範疇に入ることを確認し続ける。
・日本の尖閣諸島への施政権の侵害を求める、いかなる一方的な行動にも反対する。
アメリカの国防総省が11月上旬に発表した「中国の軍事力」報告書は中国の人民解放軍東部戦区が日本の尖閣諸島に対して日本の主権や施政権を否定する侵入行動を急速に高めてきたことへの警告を発した。
日本側では尖閣の日本領海への侵入を中国海警だけの海上治安行動として受け取りがちだが、同報告書は中国側が東部戦区の正規の軍隊が直接の指揮下におく中国海警や漁船を装う民兵を先頭に立てての軍事行動とみなしていることを指摘していた。
▲画像 「中国の軍事力」報告書 出典:アメリカ国防総省
中国の人民解放軍は共産党中央軍事委員会の司令の下に2016年に軍態勢の再編成を実行し、全軍を東部、西部、南部、北部、中部の5戦区に分けた。そのうち東部戦区は南京市に司令部をおき、周辺の各省と台湾と東シナ海、さらに日本に関連する有事への対応を任務として、その戦区内の「平和を守り戦争に勝つ」ことを活動目標とする。
アメリカ国防総省の同報告書によると、東部戦区は陸軍3集団軍、海軍艦隊、海軍航空部隊、3海兵旅団、2空軍部隊、2航空基地、1ロケット軍基地などを保有し、尖閣海域に出動する中国海警部隊と海上民兵をもすべて指揮下においている。
同報告書はとくに東部戦区の尖閣諸島に対する最近の動きを具体的に指摘していた。その要旨は以下のようだった。
・東部戦区は2020年に日本の尖閣諸島への施政権の主張に挑戦するため、艦艇と航空機による尖閣の日本側の領海と接続水域への侵入の継続時間と積極性を激増させた。
・東部戦区の艦艇や航空機は尖閣諸島の至近海域を中国側の主権の主張の誇示のためだけでなく、日本側との有事に備えての敏速な臨戦態勢を強化するために、活動を続けている。
・2020年7月には東部戦区の中国海警の艦艇2隻が日本側の12カイリ(約22キロ)の領海内を39時間23分、継続して航行し、2012年以来、最長の日本側領海内の航行記録を作った。
・2020年12月末までに中国側の同種艦艇は尖閣の日本側接続水域に年間通算333日も侵入して、2019年の282日という記録を破る最多の日数を誇示した。しかも中国側の艦艇は2020年には日本の領海内で操業中の日本漁船に対しても追尾して退去の命令を発するなど従来よりも攻勢、威圧的な動きをみせた。
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