台湾「公民投票」不発、蔡政権安堵
Japan In-depth / 2021年12月26日 23時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・12月18日に台湾で公民投票が行われたが、野党国民党提出の4事案は否決された。
・投票率伸び悩み、国民党による蔡政権揺さぶりは不発に終わった。
・ 民進党政権に対する有権者の支持は得られた。これで2022年実施予定の統一地方選挙にはずみがついた。
今年(2021年)12月18日(土)、台湾では、4事案に関して公民投票が行われた。いずれの事案も最大野党・国民党が提出している。与党・民進党は、これらすべてに反対していた。
おそらく、国民党は民進党政権を揺さぶるため、公民投票を仕掛けたのではないだろうか。もし、事案が通過するようであれば、たちまち蔡英文総統の求心力は低下する。ひょっとして、中国共産党が国民党に公民投票を実施するよう扇動した可能性も捨て切れない。
実は、台湾中央選挙管理委員会は、新型コロナ感染拡大の影響で、8月に予定していた公民投票を12月に延期している。
同委員会の発表によれば、今回、有権者数は1982万5468人だった。そこで、事案成立には、有効投票数の4分の1以上(495万6367票)の賛成が必要となっている。ただ、たとえ4分の1という関門を突破しても、反対が賛成を上回れば否決される。
さて、4つの議案は次の通りである。
第1事案(黃士修提出)は、台湾北部にある第4原発稼働を求めた。無論、温室効果ガスを抑制するには原発を稼働した方が良い。だが、原発を稼働させると、万が一、事故があった場合、周辺住民は甚大な被害を受けるだろう。
第2事案(林為洲・立法委員提出)は、肥育促進剤ラクトパミンが含まれる米国産豚肉の輸入禁止を求めた。だが、民進党側は、101ヶ国がラクトパミン入りの米国産豚肉を輸入しているので、安全性に問題がないと説明していた。
もし、この事案が通過すれば、台湾は米国産豚肉を輸入できず、米国との関係を悪化させるだろう。また、台湾はTPPへの加盟を申請しているので、申請に何らかの影響が出ないとも限らない。
第3の事案(江啟臣・立法委員提出)は、公民投票から半年以内に全国規模の選挙がある場合、公民投票と選挙の同日実施を求めている。
確かに、全国的選挙の際、公民投票も一緒に行えば効率は良い。しかし、選挙と公民投票を一度に投開票する場合、混乱が起きやすいというデメリットもある。この事案に関しては、テクニカルな問題なので、公民投票で民意を問うほどの問題なのかという疑問が残る。
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