日本メディアの対露観、未だ収斂せず
Japan In-depth / 2021年12月29日 11時0分
以上の通り、保守系紙の論調はロシアに対し厳しいが、他の日刊紙の内容は微妙に変わってくる。朝日は意外に(失礼!)ロシアに批判的だが、他のリベラル紙はどこか奥歯に物が挟まっているような論調だ。
●朝日新聞:「時代錯誤の国家観を隠さないのがロシアのプーチン大統領だ」、「自らは明文化された約束を平然と破る一方で、自国の安全保障のためにNATO不拡大を保証するよう求めるのは、あまりに身勝手だ」
●毎日新聞:「日本との関係では、北方領土の軍事化を進め」、真摯に対話しようという姿勢はうかがえない」「ロシアは融和を追求した原点に戻るべきだ。対決姿勢だけでは、国際的な孤立を深めるだけだ」
●東京新聞:「制裁解除には欧米との関係改善が必須」だが、「国民の不満が募って」おり、「一見、盤石なプーチン体制」でも、「ロシアは時代の変わり目を迎えていて、社会の深層では静かな地殻変動が起きているのかもしれ」ない。
日経はロシアには厳しいが、北方領土問題では「日本側の方針のブレ」を指摘している点が興味深い。
●日経新聞:「独裁政権の行き着く先は歴史が示している。同じ過ちを繰り返すべきではない」、(北方領土問題について)「政権が代わるたびに方針がぶれるといった日本側の問題もあったことは反省点だ」
なるほど、どうやら日本メディアの対露観は未だ収斂していないようだ。今回のプーチンの動きを元KGB独裁者の「ソ連」復活の野望と見るか、欧州の一員のつもりなのに、決して欧州は受け入れないロシアを救う民族主義者の愛国的行動と見るかによって、今回の米露首脳会談の評価は分かれるだろう。果たしてどちらなのか。
いずれにせよ、最大のボタンの掛け違いは、西側が「東西冷戦に勝利した」と思っているのに対し、プーチンはこれぽっちも「負けた」とは思っていない、もしくは、絶対に負けを認めたくない、だろうことだ。この溝は永遠に続くのだろう。西側は決してロシアを仲間として受け入れない。この点は恐らく、トルコに対しても同様だろうからだ。
〇アジア
オリンピックを間近に控える中国で新規感染者がおよそ1年9か月ぶりに200人を超えたという。ゼロコロナの中国で200人ということは、もしかしたら、実態は2000人はいるかもしれない。これが北京で3年半暮らした筆者の根拠のない実感だ。北京政府は必死で抑え込もうとしているが、完全制圧は難しいのだろう。
〇欧州・ロシア
ロシア外務省は、NATO側から高官協議を来年1月12日に開催するよう打診され、現在検討中だとタス通信に述べたそうだ。恐らくプーチンは「してやったり」と思っているだろう。ウクライナ国境沿いの部隊の一部を撤退させたとも報じられたが、これもプーチン一流の戦術だろう。事務レベルで如何なる議論になるのだろうか。
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