根強い「反習近平派」勢力の存在
Japan In-depth / 2022年1月5日 15時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・「6中全会」が採択した「歴史決議」は全体の約3分の2が習近平主席に関する内容。
・一方で、「6中全会」前後に明らかに習近平に反旗を翻す論文が相次ぐ。
・中国共産党内部で、深刻な党内対立が生じていると推測できる。
昨2021年11月8日から11日にかけて、中国では将来の重要方針を決める「第19期中央委員会第6回全体会議」(以下、「6中全会」)が開催された。閉幕後まもなく、「第3の歴史決議」全文が公開されている。
3万3千字の同決議文の中では、習近平主席に関する内容が全体の約3分の2を占めた。共産党指導者5人の名前が登場するが、習主席が22回、毛沢東が18回、鄧小平が6回、江沢民と胡錦濤が各1回となっている。
この決議文の中に「核心」という言葉が23回出てくる。それは、毛沢東や習主席を紹介する時にのみ使用される。だが、毛沢東は1回しか使われていないのに、習主席は7回も使われている。
一方、『学習時報』(「上海閥」に近い“党校”発行)には、習近平主席に対する“当てつけ”のような論文が昨年11月の「6中全会」前に1度、その後、2度掲載された。また、12月、同様の論考が『人民日報』(1回)や『解放軍報』(2回)に載せられたのである(2021年12月末現在)。
第1に、「6中全会」直前の10月27日、『学習時報』が「現代化の実現は正しい組織路線で保証されなければならない」という記事を掲載した(阿波羅網記者・秦瑞「習近平を林彪、四人組だと暗示している? 中国共産党の2大官製メディアは何を企んでいるのか?」『阿波羅新聞』2021年11月20日付)。
1979年7月29日、鄧小平は中国海軍の党常務委員を迎えて「思想・政治路線の実現は組織路線に依存する」という演説を行った。論文の筆者は、記事の中で、もし習主席が鄧小平の確立した路線を否定するならば、林彪や四人組と同類だとほのめかしている。
▲写真 鄧小平 出典:Photo by © Wally McNamee/CORBIS/Corbis via Getty Images
第2に、「第3の歴史決議」全文発表の翌日(11月17日)、『学習時報』は「社会主義現代化建設は革命精神を発揮しなければならない」という記事を掲載した(『万維読者網』「鄧小平を引っ張り出して、習近平に冷水浴びせる」同年11月18日付)。
論文の筆者は約2200字の文章の中で、1980年12月の鄧小平の演説「調整政策の実施と安定と団結の確保」を引用し、それは、今後、習政権の道筋の「重要な示唆」になると述べた。他方、鄧小平の名を17回も登場させ、鄧の主張をアピールしている。だが、習主席の名は形ばかりに1回だけしか登場させていない。習主席に反旗を翻しているのは明白だろう。
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