バイデン政権の対露「宥和政策」
Japan In-depth / 2022年1月7日 22時23分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2020#01」
2022年1月3-9日
【まとめ】
・ウクライナ問題をめぐるバイデン政権のロシアに対する個々のレベルの政策は間違っていない。
・しかし、全体的にみると「宥和政策」にしか見えない、まさに「合成の誤謬」。
・同様のことは、岸田政権の中国に対する政策にも言えるのではないか。
謹賀新年、2022年も宜しくお願い申し上げる。今年の年始は三が日で終わり、4日からは通常営業となったのだが、今回は年頭から少しまじめに考えた。過去一年間、もしくはそれ以上の期間にわたり、もしかしたら筆者は「放電」ばかりしていたのではないか、しっかり「充電」ができていなかったのではないか、という反省である。
振り返ってみると、心当たりはある。昨年までは週に数回の原稿を書くために、短期「充電」と短期「放電」を毎週繰り返してきたような気がする。締切日に遅れるのは嫌だから、何とか間に合うよう徹夜してでも原稿は書く。それなりのものは書き上がるのだが、読み直している暇はない。次の原稿の締め切りが近付いているからだ。
そこで今年は考え方を180度転換した。要するに、「充電」なければ「原稿」なし、である。勿論、「充電」したからといって、原稿の質が上がるとは限らない。それでも、これまでより、もう少し余裕をもって考え抜いてから原稿を書いてみたい、そんな気分になってきたのだ。歳を取ったからか、怠け者になったからか、本人にはわからない。
という訳で、今年前半は原稿の数が少し減るかもしれないが、このカレンダーだけは別である。これまで毎週お付き合い下さった読者の皆様方には改めて心から御礼申し上げたい。本年も可能な限り、週一回のペースでこの外交安保カレンダーを書き続けるので、何卒宜しくお願い申し上げる。
さて、新春最初のテーマは「合成の誤謬」だ。英語ではfallacy of compositionといい、元来は「ミクロの視点では正しいことでも、それが合成されたマクロ(集計量)の世界では、必ずしも意図しない結果が生じること」を意味する経済学用語だった。ところが、この原理、国際政治にも結構当てはまると思っている。
「合成の誤謬」とは要するに、「個々のレベルでは正しい対応をしても、全体で見ると悪い結果をもたらしてしまう」ことだが、これこそ、現在の対中、対露外交の本質を突いている言葉ではないかと思うのだ。例えば、バイデン政権の対プーチン対応は、個々の政策については、決して間違っていないかもしれない。
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