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ブレグジットから1年、その功罪

Japan In-depth / 2022年1月17日 23時0分

 こうした中で、欧州大陸市場からの撤退に踏み切る英企業が続出している。例えば、スーパーマーケット・チェーンのマークス・アンド・スペンサーはブレグジットによりサプライ・チェーンが煩雑化したことを理由に挙げて、フランスにおける11店舗を閉鎖した。


 欧州大陸から英国へ輸入される農産物の価格も上昇が目立つ。大陸産のチーズやバターの価格も最近、20〜30%上昇。バターやチーズなどを使ったピザなどの加工食品を大陸に輸出していた英国の食品会社は大陸向けは大口の注文に限定することにした。価格の問題だけでなく、EUの動植物検疫を受け、衛生規則への適合をチェックされるなどの手続きを経なければならない。


 食品産業界の調査団体によると、21年1〜9月、英国からEUへの飲食料品の輸出は前年同期比に比べて14%減少した。


 22年に入っても、ブレグジットをめぐる新たな制限措置の動きは止まらない。英政府は今年1月1日から大陸から輸入される物品に対する税関検査を開始した。また、22年半ばから、輸出品に対する国境での検査が強化され、動植物検疫では書類審査だけでなく、実物検査も実施されるようになる。


◼️  ”グローバル・ブリテン“へシフト


 当然ながら、ブレグジットで人の流れでも異変が起きている。規制強化に、観光、飲食、小売、輸送、医療介護などの業界で、英国人がやりたがらないとされているきつい仕事を担っていた、ポーランドなどEU加盟東欧諸国出身の移民労働者が、ブレグジットよる規制強化で大挙して帰国してしまい、これらの業界では人手不足は深刻化し、賃金は上昇している。介護分野では、ひところは全体の三分の一を占めていた移民労働者の割合が数パーセントまで低下したという。


 これに対して、ジョンソン首相は、賃金上昇は歓迎すべきことだとして、ブレグジットの一つの成果だと“強弁”している。英政府は企業の関心を欧州大陸から今後、成長が見込まれるインド太平洋地域にシフトさせたい考えで、これは“グローバル・ブリテン”戦略の一環だ。


 英国はすでに日本と経済連携協定(EPA)を締結し、日豪加など11カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP11)への加盟を申請した。さらに、22年に入ってインドとの自由貿易協定締結を目指す交渉を開始した。



写真)G7外相会合で、議長国の外相として発言するトラス外相(2021年12月12日、リバプール、イギリス) 
出典)Photo by Jon Super - WPA Pool/Getty Images


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