戦争準備から国内安定へと舵を切った中国
Japan In-depth / 2022年1月19日 7時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・習近平政権が戦争も辞さない「戦狼外交」から国内安定重視に方針転換か。
・「習近平派」と「反習派」が鋭く対峙。秋の党大会まで不安定な政治状況続く。
・「習派」は軍を味方に党大会乗り切りを図る。しばらく「衰狼外交」(「死んだふり外交」)が続く可能性。
今年新年早々、『中国瞭望』に沈舟署名の「習近平2022年1号軍令の大変化」(2022年1月4日付)という論文が掲載された。興味深い記事なので、紹介したい。
その中で、まず第1に、沈舟は次のように述べている。
「1月4日、習主席は、例年通り、中央軍事委員会2022年1号命令を発布した。だが、それは前年に比べて大きな変化を見せている。同2021年1号命令で強調した『戦争準備に焦点を合わせる』のをやめる一方、『国家安全保障と軍事闘争の情勢変化』を正確に把握し、『戦争の変化、敵対者の変化』を注視しながら、秋の『第20回中国共産党全国代表大会を迎えよう』と軍に要求した」と鋭く指摘している。
これは、習近平政権が戦争も辞さない対外強硬姿勢(「戦狼外交」)から国内の安定(国家安全保障)を求める方向へ舵を切った証左だろう。
確かに、3年前の「中央軍事委員会2019年1号命令」には、「戦争準備は最優先事項」(『華夏経緯』「2022年1号命令発布!全軍訓練開始!」2022年1月5日付)とある。また、昨年の「中央軍事委員会2021年1号命令」にも、沈舟の言う通り「戦争準備に焦点を合わせる」(同)という語句が登場する。
この2つのフレーズだけを見ると、近い将来、中国が対外的冒険主義を採る-例えば、台湾や尖閣諸島に戦争を仕掛ける-のではないかと危惧する人達が現れても不思議ではない。しかし、沈舟は、「中央軍事委員会2022年1号命令」から推測して、習政権が“内向きの政策”へ大転換したと断定した。おそらく、この主張に間違いないのではないか。
第2に、沈舟は元来「中国軍は党防衛軍であり、国家ではなく中国共産党指導部を守ることが第一の任務である。党指導部は軍事クーデターを最も恐れており、災害救援活動への関与を含め、最高指導部の許可なく大規模動員を行えば危険な兆候と見なされかねない。軍内部でもこのレッドライン(越えてはならない一線)についてあえて触れない」と喝破した。
初めの文は有名な話なので、ご存じの方も少なくないだろう。その後の文で思い出されるのは、重慶市トップだった薄熙来である。薄は、胡錦濤主席外遊の際、自分の力を見せつけようとして軍を動かした。そのため、最高幹部らの逆鱗に触れ、2012年3月、薄は失脚している。
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