中国の不可解なGDPを考える
Japan In-depth / 2022年1月22日 18時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・中国は2021年のGDPが前年度比8.1%伸びたと発表。
・2012年から18年まで「投資+消費」だけで各年のGDPを遥かに超えていたが、19年からは下回っている。
・2020年と21年に、政府支出が著しく減少したためだと推測できる。
今年(2022年)1月17日、中国は2021年のGDPを発表した。当局によれば、GDPが前年度比8.1%伸びたという(民間投資<以下、投資>は前年比4.9%増、消費は前年比12.5%増)。「コロナ禍」にあって、この経済の回復が“本物”ならば、評価されるべきだろう。
まずは、表付きグラフ(2012年〜2021年)をご覧いただきたい。
図表)筆者作成
このグラフは、①投資と②消費を積み上げグラフで作成し、その後、折れ線でGDPを加えている。2021年の「①投資+②消費」(GDPは無視)だけを見ると、この数字は2016年から2017年の間に位置するだろう。だとすれば、2021年の「①投資+②消費」の数字は、過大評価すべきではないかもしれない。
以前、本サイトの拙稿で触れたように、中国のGDPには極めて不可解な点がある。一般に、GDPは「①投資+②消費+③貿易収支(輸出-輸入)+④政府支出」で構成される。
中国の場合、1991年以降、③貿易収支が赤字になったのは、1993年(-703億元)のたった1度だけである。同年の④「政府支出」は8017億元だったので、結果「③貿易収支+④政府支出」はプラス7314億元となっている。1993年を除く他の年(1991年〜2021年)は、③貿易収支がすべて黒字だった。
一方、政府支出だが、公務員の給与や公共事業などによる支出なので、マイナスになる事は考えられない。
したがって、(③貿易収支が極端な赤字を計上しない限り)「③貿易収支+④政府支出」は必ずプラスとなる。「①投資+②消費」だけで、GDP全体を超える事は理論上、あり得ないだろう(〇「①投資+②消費」<GDP/×「①投資+②消費」>GDP)。
けれども、中国ではそのあり得るはずのない事態が起きている。習近平政権が誕生した2012年から2018年まで、「①投資+②消費」だけで、各年のGDP全体を遥かに超えてしまう現象―「アブノーマルな状態」―が見られた。
実は、この中国における「アブノーマルな状態」 は、2008年の「リーマンショック」後の2009年から始まっている。そして、ようやく2019年から以前の「ノーマルな状態」―「①投資+②消費」だけでは、GDPを超えない―へ回帰している(2019年は微妙な数字だが、2020年と2021年はごく自然な数字である)。なぜ、回帰したのかについては、後述したい。
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