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中国現代ドラマの抱える問題点

Japan In-depth / 2022年1月24日 12時14分

中国現代ドラマの抱える問題点


澁谷 司(アジア太平洋交流学会会長)


【まとめ】


・制作者の自由は認められず、政治的・性的に微妙なテーマ、中国共産党批判はご法度。


・歴史ドラマへと流れる傾向が強い。アフレコ採用は当局によるチェックのためか。


・撮影場所は「近代的な」上海が多い。中国共産党は地方の貧困状況を隠したいからか。


 


我が国において、中国人女優の中で最も有名なのは、おそらく范冰冰(ファン・ピンピン)ではないだろうか。しかし、同国には、范冰冰以外にも、魅力的で演技の上手な女優が少なくない。個人的には、ウイグル出身のディルラバ・ディルムラット、アンジェラ・ベイビー(楊穎)、ティファニー・タン(唐嫣)、ヴィクトリア・ソン(宋茜。韓国の<現在>4人組女性アイドルグループf(x)<エフエックス>のリーダー)等の名前を挙げたいと思う。



写真)范冰冰(ファン・ピンピン)


出典)Photo by George Pimentel/WireImage


さて、中国の現代ドラマには素晴らしい作品がある。例えば、最高検察院が腐敗分子を取り締まる、陸毅主演『人民の名の下に(原題:人民的名義)』(2017年)、天才女医が大活躍する、王珞丹主演『救急救命科のドクター(原題:急診科医生)』(同)などは名作と言えるのではないか。


ただし、中国現代ドラマには、いくつかの問題を抱えている。それらを取り上げてみよう。


第1に、現代ドラマでは、政治的・性的に微妙なテーマは一切扱われない。特に、中国共産党批判を行うのは難しい。また、習近平政権下で敬遠されている“ブロマンス”のような内容は避けられる。つまり、制作者(監督やプロデューサー)が好きなテーマで自由にドラマを制作できない。


このように現代ドラマだと制約が厳しいので、歴史ドラマ(大半が秦漢帝国から大清帝国まで)へと流れる傾向が強い。往時の政権ならば、思う存分批判できる。だから、制作者は、制約の少ない歴史ドラマに傾注するのかもしれない。


第2に、現代ドラマでは、しばしばアフレコが採用される(歴史ドラマも同様か)。


実際、一部の俳優は地方の訛りがあり、北京語(正確には“普通話”)があまり得意でない人がいる(その場合、アフレコ専門の俳優が用意される)。そのため、役者とアフレコで微妙なズレを感じる時がある(例:沈月主演『流星花園2018』〔松本潤主演『花より男子』のリメイク版〕)。演者が腹からしっかり声を出していないせいか、セリフが上滑りするのは否めないだろう。せっかくのドラマも興ざめとなる。


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