北京五輪2008年から22年への変化
Japan In-depth / 2022年2月3日 16時45分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・北京は夏季と冬季五輪が開催される初めての都市となった。
・今回は、「外交的ボイコット」が行われバイデン大統領らは訪問せず。
・前回から13年半、飛躍的経済発展を遂げた中国、人類全体に好影響をあたえたのか。
かつて夏季と冬季オリンピックが同じ都市で行われた例はない(温暖な都市と寒冷な都市とでは、状況が異なるからである)。北京は夏季と冬季五輪が開催される初めての都市となった。
ここでは、日本でほとんど議論されない、北京開催の二度の五輪を比較する。そして、中国がこの13年半でどのように変化したのか考えてみたい(2008年も2022年も、巨匠、チャン・イーモウ<張芸謀>が開閉会式の総指揮を務める。だが、2008年の時、北京国家体育場<鳥の巣>の設計に参加した艾未未 <アイ・ウェイウェイ。芸術コンサルタント>の姿を、今、中国で見ることはない)。
さて、2008年のオリンピックでは、中国がグローバルなソフトパワーとして台頭した事を世界に印象付けた。当時、大半の国々は中国を好意的に見ていたのではないか。ところが、後述するように、2022年、世界は中国にあまり親しみを抱いていない観がある。
前回の五輪は、胡錦濤政権の下で行われた。そのせいか、国内での圧政が目立っていない。また、2008年5月、北京五輪直前、四川省アバ・チベット族チャン族自治州汶川県で大地震が発生したが、汶川地震に対する国際的同情も集まっている。
▲写真 2008年夏季オリンピック開催地に決まったことで歓喜する中国人。(2001年7月13日、中国) 出典:Photo by Kevin Lee/Getty Images
けれども、今回の五輪は、 “マイナスの印象”が付きまとう。それは、習近平政権が、これまでの「韜光養晦」(能ある鷹は爪を隠す)政策をかなぐり捨て、世界制覇を目指すようになったからではないだろうか。
目下、中国国内では、習政権による少数民族への圧政が続く。チベットや内モンゴルでは中国語教育の強制が行われ、新疆ウイグルでは、100万人を超えるウイグル人が強制収容所に入れられている。また、香港は「1国1制度」化され、事実上、同地域での民主主義が消滅した。
一方、習政権は、台湾に対し軍事的圧力をかけ、我が国の尖閣諸島への領海侵犯を繰り返し、南シナ海を自国の海にしようとしている。
なお、今度の2022年オリンピックで特筆すべきは「新型コロナ」(以下、コロナ)問題である。最初、コロナは武漢市で発症した。だから、依然、「コロナ中国起源説」(武漢ウイルス研究所からコロナが流出か)が有力視されている。
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