朝日新聞とヒトラー その2 小泉首相も標的に
Japan In-depth / 2022年2月16日 19時0分
《ファシズムか『小泉酔い』か》
ここでいう小泉とは当時の日本の総理大臣の小泉純一郎氏のことである。この年、つまり2001年4月に総理に就任した小泉氏はかねての公約として総理としての靖国神社参拝を実行した。朝日新聞はもちろん猛反対である。中国政府と歩調を合わせての反対だった。
中国も朝日も首相の靖国参拝は「軍国主義礼賛」とか「侵略戦争の賛美」と断じていた。小泉首相は「戦争で自国を防衛するために戦った先人への弔意」であり、「心の問題だ」と述べていた。首相の靖国参拝は日本の防衛政策や戦争史観とは関係がない、という小泉首相の見解だった。だが朝日新聞は小泉首相や小泉政権への批判を政権発足の冒頭から激しくぶつけていた。
早野記者のこの記事はまず「小泉内閣のポピュリズムがファシズムになっていくということだけは気をつけていかなければならない」という古賀誠・自民党道路調査会長(当時)の言葉を取り上げていた。
ファシズムというのはほとんどヒトラーと同義語である。ファシズムの背後や土台にはナチス・ドイツが存在し、その中心は最高指導者のアドルフ・ヒトラーであることは、ふつうの日本国民ならまず常識として知っている。
だが小泉首相を論じるうえで、さらには日本のいまの政治を論じるうえで、まずこの「ファシズムか」という言葉自体は、無意味である。「ファシズムか」という表現が的外れだった。現実から離反していた。日本のいまの民主主義政治がファシズムになるはずがないからだ。
当時の小泉純一郎首相の政治の手法がどんな内容であっても、ファシズムになるはずがない。戦後の日本の民主主義の堅固な枠組みがそんな事態を許すはずがない。だが朝日新聞が古賀誠という当時の自民党内でもどぎつい色のついた反主流派の人物の見解をあえて取り上げ、ファシズムなどという言葉を登場させることがもう悪魔化の導入部だった。
同コラム記事はさらに以下のように書いていた。
《小泉さんはファッショなのかどうか。ファシズムといえばドイツのヒトラーだけど、それと比べるのはさすがに大げさだ。そこでチャップリンが映画『独裁者』でヒトラーを模したヒンケルと小泉さんを比べると、これがよく似ているので驚く》
▲写真 映画「独裁者」で、ナチスドイツの風刺である独裁者のアデノイド・ヒンケルを演じる俳優兼監督のチャーリー・チャップリン(1940年1月1日) 出典:Bettman/GettyImages
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