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ウクライナ巡るプーチンの思惑と米の対応

Japan In-depth / 2022年2月17日 23時0分

ウクライナ巡るプーチンの思惑と米の対応




植木安弘(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)





「植木安弘のグローバルイシュー考察」





【まとめ】





・ロシアは危機を作り出すことで、米国の政治的譲歩と、国際政治舞台での復権を目指す。





・米国は情報戦や経済制裁の圧力をかけつつも、交渉に応じる姿勢。





・米国との継続的交渉によって、ウクライナのNATO非加盟とロシアの安全保障への政治的言質を取りにいくと考えられる。





 





ウクライナ情勢を巡る緊張の中で、2月14日、ロシアのプーチン大統領は、ラブロフ外相とショイグ国防相との対話をテレビ中継で流したが、この意図的操作で、プーチン大統領の戦略がより明確に見えてきた。





ロシアは、当初10万人規模の軍事力をウクライナやベラルーシの国境沿い、黒海に展開して軍事演習を行い、ウクライナへの軍事侵攻の構えを見せていたが、これをさらに15万人規模に拡大し、米国は、いつ侵攻してもおかしく無いとして警告を発していた。2月16日に侵攻といったニュースも流れ、ウクライナは、この日を「国民統合の日」として抵抗を呼びかけるといった事態にまで発展していた。





テレビ中継では、ラブロフ外相が、まだ対話を継続して解決の道を探る余地がある旨進言し、ショイグ国防相は、軍事演習は終わりに近づいており、一部は撤収を始めたと報告した。これがロシアのテレビで放映されることによって、プーチン大統領は、ウクライナへの軍事侵攻を最終目標としていたのではなく、ウクライナに最大限の軍事的圧力をかけて危機を作り出すことにより、米国からの政治的譲歩を引き出すとともに、自らの国際政治舞台での復権を目指したことが分かる。このテレビ中継は、自ら作り出した危機を引っ込めるための道具に使った。予め想定したシナリオである。









▲写真 ラブロフ外相(左)からの報告を受けるプーチン大統領(右)(2022年2月14日) 出典:ロシア大統領府





プーチンは、今回の危機で、NATOのウクライナへの拡大阻止やNATO軍の1997年ラインへの撤退(その後にNATOに加盟した国々ーポーランド、バルト三国や他の東欧諸国ーからの撤退)、ロシアの安全保障の法的確約、NATOの更なる不拡大(ウクライナの非加盟)、ロシアの事前承認なくウクライナや東欧、コーカサス地方などでの軍事演習を行わないことなどを要求した。





これらは、当然ながら米国や他のNATO諸国にとっては受け入れられない要求だったが、プーチンとしては、最大限の要求を掲げることによって、それらが拒否されることを理由に、自らを被害者として写し、国内での支持を高めるという政治的意図もあった。





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