ウクライナの「フィンランド化」?
Japan In-depth / 2022年2月20日 7時0分
村上直久(時事総研客員研究員、長岡技術科学大学大学院非常勤講師)
「村上直久のEUフォーカス」
【まとめ】
・マクロン仏大統領、ウクライナの事実上の中立化を意味する“フィンランド化”を提案。
・プーチン露大統領が最も恐れているのは、ウクライナのNATO加盟ではなくEU加盟。
・NATOとロシアの対立の背景には、EUの浸透力が強まっている状況がある。
ロシアによる軍事侵攻の懸念が高まり、ウクライナ情勢が緊迫するなかで、米欧とロシアの首脳らによる協議が散発的に続いている。フランスのマクロン大統領もその一人だ。同大統領は事態の打開策の一環として、ウクライナの事実上の中立化を意味する“フィンランド化”を提案した。しかし、ウクライナはこれを拒否している。
今回の危機に関連して、ロシアはEUの拡大については言及していないようだが、米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トマス・フリードマン氏は同紙に、ロシアのプーチン大統領が最も恐れているのは、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟ではなく、同国の西欧化が進み、EU加盟が実現することだとの見方を示した。
■ 駐日大使はフィンランド化を否定
フィンランドは国境を接する強国ロシアによって1809年から1917年まで支配された。第二次世界大戦ではフィンランド軍はソ連赤軍の攻撃に対して数カ月間、持ちこたえ、ソ連による占領は免れたものの敗北。国土の12%を割譲した。大戦後は、中立を国是としつつ、1948年には西側の国では唯一、ソ連と友好協力相互援助条約を結んだ。これはフィンランド化に道を開く苦肉の策だった。
フィンランド化は同国の政治プロセスに旧ソ連が過大な影響力を及ぼすことを認めることによって、フィンランドがソ連による占領を免れ、独立した民主主義国家として存続することを可能にした。旧ソ連の崩壊を受けて友好条約は失効。冷戦後の1995年には欧州連合(EU)に加盟。EUの共通外交安全保障政策の枠組みに入ったことにより、フィンランド化の状態は終わった。
フランスのマクロン大統領は2月初めにモスクワを訪問した際、記者団からウクライナのフィンランド化の可能性について聞かれ、それは「(ロシアとの協議の)テーブルに乗っているオプションの一つだ」と答えた。
■ 目指すはEU加盟
ウクライナのコルスンスキー駐日大使は2月9日、東京都内の日本記者クラブでの記者会見で、マクロン氏の発言について聞かれ、「フィンランド化とは、安全保障と引き換えに国家主権を譲り渡すことだ」と切り捨てた。
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