朝日新聞とヒトラー その6 「安倍首相はヒトラーと組む」のか
Japan In-depth / 2022年2月24日 11時0分
以上の記述で半藤氏が「ただトランプ大統領に寄り添っている」とする文章の主語は疑いなく、この時点での日本の首相だった安倍晋三氏である。その安倍首相が北朝鮮の核武装を防ぐためにトランプ大統領の政策に同調することがドイツのヒトラーと組むことに等しいと、半藤氏は断ずるのだ。ということはそんな主張を堂々と紹介する朝日新聞の見解だとみなしてよいだろう。
半藤氏はさらに安倍政権非難の歩を進め、安倍政権自体がナチスと同じだとも述べる。
≪(安倍政権は)集団的自衛権の行使容認について、憲法を変えずに、閣議決定で可能にした。まさにナチスの手法を学んだようです≫
とにかく時代の違いも、国際情勢の違いも、無視して、いまの安倍政権を戦前戦中の軍部主導の日本に、さらにはヒトラーのドイツに、なぞらえるのが半藤氏の手法なのである。
半藤氏のこの際の主題は北朝鮮問題だった。より正確には北朝鮮に対する日本の対応を論じているのだった。その主張の冒頭を紹介しよう。
≪(安倍首相は)国難といって現在、最大の問題は北朝鮮情勢でしょうが、これはご自分でつくっていませんか。自作自演の危機ではないか、と申し上げたい≫
北朝鮮の危機は事実ではなく、安倍首相がつくりあげている、というのだ。「自作自演」とは実際には存在しないことをでっちあげて、事実であるかのように偽り、他者をだますことである。北朝鮮の核武装のための再三の核爆発実験も、日本の方角に向けて、これまた再三、発射される弾道ミサイルも、安倍首相のでっちあげ、だというのか。この歴史作家は本当に朝日新聞の掲載どおりの言葉を述べたのだろうかと、いぶかりたくなる。
だが半藤氏はさらに安倍非難を続けていた。
≪安倍さんは国連総会で、今は対話の時ではなく圧力をかける時だと述べてきましたが、それでは危機を高めるばかりです。≫
とくに安倍氏に限らず、北朝鮮の核兵器開発に反対する側はもう20年近くも対話に努めてきた。だが北朝鮮は核武装放棄のための対話には一切、応じず、今日にいたった。だからこそアメリカも日本も、圧力をかけることになったのだ。しかも国連でも圧力の象徴である北朝鮮への経済制裁に安全保障理事会の15ヵ国すべてが賛成した。
だが半藤氏は安倍首相の国際協調のその態度が日中戦争の際の日本軍部の南京攻撃に似ているとして、とてつもない連結の非難をぶつけていく。そして頻繁に「ヒトラーのドイツ」へと、いまの日本を重ね合わせるのである。
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