中南米でロシアの影響力じわりキューバにミサイル配備説も
Japan In-depth / 2022年3月1日 7時0分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・ウクライナ危機めぐり「ロシアがキューバにミサイル配備」説が流れる。中南米でロシアの影響力が浸透しつつある。
・ロシアとベネズエラは軍事面でも協力関係を強化し、マドゥロ同国政権はロシアにとって中南米での重要拠点になっている。
・他の中南米左派政権にもロシアが接近し、関係を強める可能性がある。
■ ロシア外務次官の発言で波紋
ウクライナ情勢緊迫の中、ロシアがキューバにミサイルを配備するのではないかとの憶測が一時、取り沙汰された。
冷戦時代の「キューバ危機」の悪夢を想起させる憶測を生むきっかけとなったのは、ロシアのリャプコフ外務次官の発言。同外務次官は1月、テレビ・インタビューで米国がウクライナへの干渉を続けるなら、ロシアがキューバやベネズエラに軍事資産を展開する可能性を排除できないと語った。
この発言についてサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「ロシアの脅しだ」と一蹴したが、その後、ロシアの口先だけの脅しでないと思わせるニュースが続く。
写真)ロシアのリャプコフ外務次官(2015年)
出典)Photo by Host Photo Agency/Ria Novosti via Getty Images
ロシア政府は、プーチン大統領がニカラグア、ベネズエラ、キューバの3首脳と順次電話会談し、戦略的関係を強化することで合意したとの声明を発表した。「ニューヨーク・タイムズ」が、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアの3カ国にミサイル配備についてロシアが打診した可能性があると報じたことも波紋を広げる一因になった。
ウクライナ侵攻へ軍事力を大量投入している時に、地理的にも遠くロシアの安全保障に直結しない中南米でプーチン政権が新たに米国との軍事対立の火種をつくることは常識的には考えられない。実際、最近ではこの種の話は欧米メディアでもほとんど取り上げられなくなり、立ち消えになった格好だ。
■ 強まるベネズエラとの軍事協力
だが、こんな憶測が飛び出すほど中南米ではロシアの影響力が広がりつつある。大型の経済支援を振りかざす中国ほど目立つことはないが、ロシアは同地域の反米左翼傾向の強い国を中心に政治・経済、軍事面で結びつきを強めている。
キューバでは1991年のソ連邦崩壊後、最後のロシア軍部隊が93年に引き上げて以来、両国間の軍事協力に関するニュースは公にはほとんど明らかにされていない。しかし、軍事情報メディアではここ数年、ロシアがキューバの軍事関連事業の支援に動いているといった情報が見受けられるし、2000年代初めに閉鎖されたハバナ郊外のロシアの対外諜報機関施設の再開で双方が合意したとの話もささやかれている。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
中距離弾配備に制限なし ロシア外務次官「米国次第」
共同通信 / 2024年11月26日 6時51分
-
ロシア、核指針改定 ウクライナ支援の米国に警告
ロイター / 2024年11月20日 2時52分
-
ロシアが核使用の敷居大幅に引き下げ、プーチン氏に幅広い決定権 ウクライナ戦況に合わせた異例の見直し、世論は支持、核威嚇依存体質強まる
47NEWS / 2024年11月17日 10時0分
-
トランプ氏への警戒心は「過剰」か? 「再トラ」ついに現実に その3
Japan In-depth / 2024年11月13日 23時0分
-
北朝鮮軍に"頼る"ロシアの姿勢が激変した事情 ついに交戦開始、北朝鮮側が得るものは?
東洋経済オンライン / 2024年11月6日 10時0分
ランキング
-
1八戸5歳女児死亡の初公判、検察側「母親らは一日一食しか与えず隠れて食べていた女児に暴行」
読売新聞 / 2024年11月26日 15時45分
-
2【速報】共同通信の社長が外務省に謝罪 生稲晃子外務政務官の靖国参拝めぐる誤報問題で
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月26日 19時51分
-
3求人サイトで公募した市長後継候補、原因不明の急病で辞退…あす現市長が記者会見
読売新聞 / 2024年11月26日 16時1分
-
4コロナ新しい変異株「XEC株」はどんなウイルスか 「冬の対策とワクチン接種の是非」を医師が解説
東洋経済オンライン / 2024年11月26日 9時0分
-
5石川県西方沖でM6.6の地震 最大震度5弱 津波被害の心配なし
ウェザーニュース / 2024年11月26日 22時47分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください