22年中国政府活動報告を読む
Japan In-depth / 2022年3月8日 12時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・中国の全国人民代表大会で、李克強首相が政治活動報告を行った。
・同報告、安全保障の強化を謳う。習総書記の円滑な3期目移行を狙う。
・となれば、李首相は解任され、全国人民大会主席という“名誉職”に追いやられる可能性が強い。
今年3月5日、中国では全国人民代表大会が開催された。同日、李克強首相が政治活動報告(以下、「報告」)(a)を行っている。李首相は、その中で様々な問題を提起したが、刮目すべき点を挙げてみよう。
まず、第1に、今年の「報告」では「国家安全保障能力の建設を強化する」等、国の“安全保障”を強調している。意味深長な表現ではないか。
おそらく、これは今年秋の第20回党大会を見据えて言及されたのだろう。「習近平派」としては習総書記がスムーズに3期目を迎えるのを目標にしている。一方、「反習近平派」は、それを阻止したいという思惑を抱いているのではないか(昨年12月、李先念元国家主席の娘婿、劉亜洲空軍上将による「<反習>クーデタ未遂事件」が発覚したと伝えられる)。
本来、中国のトップリーダーである政治局常務委員に関しては「七上八下」(67歳まで同委員に留まれるが、68歳以上は引退する)というルールがあった。
今秋、69歳になる習総書記は、その慣例を破って、3期目を目指すのだから、党内で風当たりが強い。その人事を巡って、中国共産党の中では、熾烈な党内闘争が繰り広げられていると考えられよう。
仮に、習総書記が円滑に3期目へ移行できない時、国内は混乱に陥る公算が大きい。場合によっては、内戦に突入する可能性も排除できないだろう。
元々、人民解放軍は“私軍”の傾向が強い。例えば、かつて重慶市トップだった薄熙来が、胡錦濤主席(当時)が外遊している間、勝手に軍を動かしたため、胡主席らの顰蹙を買った。それが薄が失脚する一因となっている。
ところで、李首相の去就も注目されよう。首相は今秋、まだ67歳なので、本来ならば、政治局常務委員として残留の目があるはずだった。
▲写真 中国の習近平国家主席(左)と李克強首相(右)全国人民代表大会の開会式(2022年3月5日、中国・北京) 出典:Photo by Andrea Verdelli/Getty Images
しかし、習近平主席と「太子党」と李首相(「共青団」)とでは出身母体が異なる。また、習主席と李首相では、経済運営に関して考えが真逆である。前者は社会主義経済重視であり、後者は「改革・開放」の「鄧小平路線」を信奉している。
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