「日中友好」の光と影 国交50周年を機に その2 なぜ林芳正外相を懸念するのか
Japan In-depth / 2022年3月19日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・林芳正氏は外務大臣就任まで、日中友好議員連盟の会長を務めていた。
・中国共産党は、以前から同議員連盟を特別に重視してきた。
・同議員連盟は、中国側に議員が存在しないという異色の組織。
前回は日中関係を俯瞰するにあたって岸田内閣の林芳正外務大臣への懸念を述べた。なぜ懸念なのか、その理由を具体的に説明しよう。林芳正という政治家が体現する日中関係での意味には多数の複雑で微妙な問題が内蔵されているのである。
林氏は外務大臣への就任と同時にそれまで務めていた日中友好議員連盟の会長を辞任した。その理由は「無用な誤解を避けるため」だと述べた。
「無用の誤解」とはなんなのか。
林氏のような中国への全面協調の姿勢をみせてきた政治家がいまの日本の外相になることを懸念するのは「無用」なのか。
そもそもそうした懸念を覚えることは「誤解」なのか。
決してそんなことはない。
その理由を日中友好議員連盟の実態と林氏のその組織へのかかわりを報告しながら説明しよう。
中国共産党政権は1972年の日本との国交樹立の当時から日中友好議員連盟を「中日友好団体」と呼び、特別に重視してきた。
日中友好議員連盟がいまの名称で発足したのは厳密には日中国交樹立の翌年の1973年だが、その前身は「日中貿易促進議員連盟」だった。国交のない1952年に結成された同促進議員連盟は日中両国の貿易、そして国交を求める親中派議員の集まりだった。
1950年代といえば、日本は中華民国(台湾)との国交を保ち、中華人民共和国とは距離があった。だが日本の一部では日中友好運動がイデオロギーや贖罪意識ともからみ、左傾の政治運動として勢いを広げていた。
だから日中友好のこの議員連盟は中国政府と直接に緊密な連携を保ち、日本の当局や世論に親北京政府の政策をとるように働きかけてきた。そんな出自の団体なのである。
中国側が正式に「中日友好団体」と呼ぶ日本側の組織は日中友好議員連盟のほかに6団体ある。
日中友好協会、日本国際貿易促進協会、日中文化交流協会、日中経済協議会、日中協会、日中友好会館である。
この諸団体に日中友好議員連盟を含め、中国側は「中日友好七団体」と呼称する。その諸団体のなかでは現職の国会議員を抱える友好議員連盟が圧倒的に影響力が大きいわけである。
だがその友好議員連盟が中国共産党の対外秘密工作を実施する統一戦線工作部に利用されることもあるという警告がアメリカ側から発せられた。この点は後述する。
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