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独裁者の計算と誤算(上)「プーチンの戦争」をめぐって その1

Japan In-depth / 2022年3月20日 23時0分

「今ウクライナに侵攻してもNATO(北大西洋条約機構)は動かない」





との確信を得た上で、軍事行動に打って出たのである。





言い換えれば、彼は精神に異常を来したどころか、いたって怜悧な戦略眼の持ち主であるに違いない。ただ、その世界観が100年単位で古い、ということは、これまた間違いない。





具体的にどういうことか。





ウラジミール・プーチンは1952年生まれ。自身は「極貧の幼少期を過ごした」と語っているが、実際には父親が工場労働者として給与所得を得つつ、情報機関(悪名高いソ連邦のKGBなのか、詳細までは不明)の下働きもしていた。この「副業」で結構な収入を得ていたと、複数の「非側近」が証言している。





ともあれ成長したプーチンは、レニングラード大学を卒業して前述のKGBに職を得たが、当時の評価もまちまちである。閑職しか与えられなかった、と言う人も多いが、在籍16年で中佐まで進級している(KGBにも軍隊と同様の階級制度があった)ところを見ると、それなりに仕事はできたのだろう。









▲写真 ロシアの攻撃によって甚大な被害を受けた住宅団地(ウクライナ・キエフ、2022年3月18日) 出典:Photo by Chris McGrath/Getty Images





いずれにせよ、彼の生涯を詳細に後追いするのが本シリーズの主眼ではなく、ここはごく簡単な説明でおゆるし願うが、ソ連邦の崩壊を経験した彼は、新たに誕生したロシア連邦が、西側から常に侮られていると考えるようになったらしい。





こうした下地があって、地下資源の開発などでロシア経済が立ち直ってくるとともに、ソ連邦の版図すべては無理でも、スラブ・正教会文化圏に属する国を糾合した新たなロシア連邦を再構築する、という世界観を持つに至ったと衆目が一致している。





スラブ・正教会文化圏に属する国とは、すでにロシアの属国と化していると評される、ベラルーシ(白ロシア)、ウクライナの他、バルト三国までがこれに該当する。





中でもウクライナは、新年特別号でも述べさせていただいたが、NATO加盟を画策するなど「新欧米・脱ロシア」に傾斜していた。ロシアとしては重大な脅威と受け取らざるを得なかったのだ。





詳細は、軍事ジャーナリストの淸谷信一氏が『ロシアにも三分の理』という秀逸な記事を本誌に寄せているので、そちらに譲るが、私も清谷氏も、武力で現状の変更を試みる行為は断じて許されるものではないと考えるし、この点に異論を唱える人もいないであろう。





そうではあるのだが、やはり戦争というものは、当事者のそれぞれに「正義」があり、勝利を博するための戦略があるからこそ起きるものであると、歴史が教えるところだろう。





ただただプーチンが悪い、あいつは頭がおかしい、と連呼するだけでは、なにも解決しない。彼はいかなる勝算のもとウクライナに侵攻したのか、またそこにはいかなる誤算があったのかを、まずは冷静に検証する必要があるだろう。





(つづく)





トップ写真:クリミアの併合記念日コンサートで挨拶するプーチン露大統領 (2022年3月18日、ロシア・モスクワ) 出典:Photo by Getty Images




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