TBS「報道特集」ベラルーシ大統領単独インタビューが提起する問い
Japan In-depth / 2022年3月21日 11時0分
また、ベラルーシの核配備の可能性に切り込む金平キャスターの質問に対し、「もしアメリカや西側諸国がベラルーシの国境付近に核を配備したら、プーチンにソ連崩壊の時にロシアにわたした核を戻してくれるように伝えます」とルカシェンコ大統領は述べた。つまり、そういう意志がある、という発言を引き出したのだ。同時に、プーチン大統領の繰り返している、「自分たちの行動を西側に責任転嫁する」手法も明確になった。
第3に、首都ミンスクの市民にインタビューし、体制批判の言葉を引き出していたことだ。しかも金平キャスターはそれをルカシェンコ大統領にぶつけていた。一般市民の声を西側に届けた意義は大きい。
▲写真 反政府デモで首都に集まる市民ら(2020年10月4日にベラルーシのミンスク) 出典:Photo by Artem Dubik/Getty Images
さて次に、私が今回の「報道特集」をこれほどまで評価する理由を述べよう。
第1に、日本のテレビ局は現場にキャスターもしくは記者を派遣しなくなっている。そうした中で、番組キャスターを送ったTBSの英断は賞賛に値する。
なにがそんなにすごいんだ、報道機関なら現場に記者やキャスターを送るのが当たり前だろう、と思う人もいるかもしれないが、実は、日本のテレビ局が紛争地帯に記者・キャスターを送らないようになって久しい。
危険な地域での取材は考えるほど簡単なものではない。実際、毎年、命を落とすジャーナリストが約50人はいるのだ。過去、140人を超した年もあるのだ。(国境なき記者団調べ)
あのアメリカのイラク侵攻の時も、現場でリポートしていたのはフリーランスのジャーナリストがほとんどだった。そう。当時日本のテレビ局は自社の記者を送らないようにとっくになっていたのだ。
その理由。1つには、危機管理の観点からだ。もし社員を紛争地帯に送って死んでもしたら大変なことになるという思いがあった。(実際、過去、事故などで記者が命を落としたケースは少なからずあった)できれば社員を送りたくない、という空気が醸成されていた。
もう1つには、予算の問題だ。紛争地帯に記者やクルーを送るとなると莫大な金がかかる。もともとテレビ局にとって報道部門はコストセンターの最たるもので、社内では「金食い虫」扱いされている。外部のフリーランスを使えばリスクも減らせるし、予算もぐっと抑えられるとあって、それが主流となってしまった。もうこの20年以上そういうシステムになっている。
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