反戦ロシア人の声を聞け 「プーチンの戦争」をめぐって その3
Japan In-depth / 2022年3月23日 18時0分
アンナ 通じますよ。何年か前、ウクライナを訪ねた時に、こんなことがありました。
入国審査で、係官はウクライナ語で質問してきたのですけれど、私は相手の質問の意味がほとんど全部分かりました。そしてロシア語で答えると、相手も理解できて、ウクライナ語で質問を重ねて来たのです。あれは知的な体験としても、非常に面白いものでしたね。
――なるほど。だからロシア人とウクライナ人が日本で一緒に行動する、ということも可能なわけですね。そうしたコミュニティーのようなものがあるのでしょうけれど、みんな本当に戦争が始まると考えていましたか?
アンナ いえ、全然。キエフに住んでいる従姉妹と2月23日(侵攻が始まる前日)に電話フェイスブックで話したのですが、その時も、お互い「きっと大丈夫よ」「そうだよね」という調子でした。24日になってその従姉妹から「空爆が始まった」と連絡が来て、林さんが今言ったようにロシア人のコミュニティーがあるのですが、SNSで連絡を取り合って、25日に第一回のデモを行いました。
――その戦争の原因ですけれど、プーチン大統領に言わせると、ウクライナの民族主義者がロシア系住民に対するジェノサイドを行っている、と。これはやはりデマでしょうか?
アンナ それがこの問題の難しいところでして……もちろんロシア政府による宣伝や誇張は山ほどあるのですが、全部が全部デマだというわけでもないのです。
2017年に、それまでウクライナ語と並んで公用語とされてきたロシア語が、事実上禁止されてしまいました。ロシア語教育を制限する法律が成立し、小学校や幼稚園でロシア語を教えてはいけない、とされたのです。私の従姉妹は幼稚園の先生をしていますので、これはたしかな情報です。これは国内に居住するロシア人など諸民族の権利を保障したウクライナ憲法に反しています。
ロシア系の住民が弾圧されたのも事実です。ジェノサイドというのは、いくらなんでも誇張ですけれど、2014年に当時の政府が転覆された際、今の政府が言うマイダン革命(林注・「尊厳の革命」と訳されるが、実態はクーデターだと見なされている)ですけれど、この騒乱で、オデッサでは48人の犠牲者が出ています。
さらにドンパス地方では、新しい政府に反対する暴動も起きて、この動きは今も続いています。
けれども、それならそれでウクライナからの脱出を希望する人はロシア国内に受け入れ、住宅や仕事を斡旋するとか、人道的に対処する方法があったはずです。実際にそうした動きも見られたのですよ。
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