日本外交の診断 兼原元国家安全保障局次長と語る その1 歴史戦が苦手な日本外務省
Japan In-depth / 2022年3月26日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・元内閣官房副長官補など務めた兼原信克氏。元外交官だが、日本外交への大胆な批判や提言をためらわない。
・兼原氏「外務省は安全保障面ではタカ派ですが、歴史問題ではリベラルでしたから歴史戦は得意ではないんです」
・古森氏「問題は戦後の日本外交の基本的スタンスにある。歴史問題では、中国や韓国からいかに事実に反する非難を浴びても一切、反論しない」
兼原信克氏といえば、日本外交を鋭く分析する気鋭の論客として、いま多方面で注目される。
安倍晋三総理、菅義偉総理の官邸にあって、内閣官房副長官補や国家安全保障局次長という要職に就いて日本の外交や戦略の中枢に立っていた。それ以前は30年ほどにわたる外交官活動を続け、フランス、アメリカ、韓国などの在外勤務に加えて、外務省本省で日米安保やソ連・ロシア問題を扱い、国際法局長をも務めた。現在は同志社大学特別客員教授である。
兼原氏は本来は外務省出身でありながら、いわゆる官僚的なパラダイムを越えて、日本外交への大胆な批判や提言をためらわない点が異色だといえる。
その兼原氏に日本の外交について、とくに中国への姿勢やアメリカとの同盟に重点をおき、最新の意見をうかがい、私自身もまた見解を述べて、自由に語りあった。その内容はいまの日本が対外的に抱える喫緊の諸課題を従来のポリティカル・コレクトネス(建前的な政治的正しさ)の枠を超えた視点や角度から遠慮なく論じる結果となったと思う。
その対談の内容を紹介したい。対談は2月中旬だったので、ロシアのウクライナ侵略には触れていないが、対中外交、対米外交など日本にとって致命的な重要性を持つ国際関係をタブーなしに論じたつもりである。
★★★
兼原信克 『中国、13の噓』を拝読しました。やはり古森さんが書く本には、目からウロコな情報が満載です。
古森義久 ありがとうございます。どぎついタイトルですが、中国の噓を具体例に基づき報告した実証的な本だと思います。
北京五輪が終わりましたけど、アメリカ議会では「ジェノサイド五輪」なんて揶揄(や ゆ)する言葉が飛び交うほど対中強硬姿勢をみせています。アメリカで採択された非難決議をみても、短い文書のなかに「中国」というワードが5回も6回も出てくる。日本の国会決議とは対照的です。
兼原 5年前のオバマ政権のときは、気候変動問題で中国の協力を取りつけることばかりに関心がありましたから、よくここまで変わったなと感心しますよ。
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