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日本外交の診断 兼原元国家安全保障局次長と語る その2 中国への忖度は効果なし

Japan In-depth / 2022年3月27日 12時3分

兼原 日本大使館職員もデモ隊に紛(まぎ)れ込んで観察していたようですが、完全な官製デモだと言っていました。





古森 尖閣国有化が注目を集めていたときや、小泉純一郎元首相が連続して靖國神社を参拝したときに起きたデモも、当局にコントロールされていた。日本が国連の常任理事国になろうとしたときに起きたデモも同じ。反日デモなる活動を当局はいかようにも管理できるのです。









▲写真 靖国神社を参拝する小泉純一郎首相(当時)(2006年8月15日、東京) 出典:Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images





兼原 中国は日本が常任理事国になることを心配して本気で焦っていました。





古森 アメリカに拠点を置く中国系の反日団体「世界抗日戦争史実維護連合会」が、たった3週間あまりで何千万という署名を集め、日本の常任理事国入りに反対を表明しています。このときは中国側に皮肉な誤解があって、日本が本当に常任理事国になってしまうかもしれないと思い込んだようです。だから必死の抗議を展開したのです。





 反日デモが起きれば、中国国内にある日本企業は大きなダメージを受けます。韓国政府がアメリカ製のTHAAD(サード)という高高度迎撃ミサイルを配備しようとしたことで中国の逆鱗(げきりん)に触れ、韓国の大企業ロッテは中国各地の出店に大打撃を受けました。それを考えれば、外交の世界で日本側が中国に忖度したところで、反日を防ぐことはできないのです。





古森 日中関係のさらに深層部をみても、日本が中国にある程度の忖度をすれば、中国もそれに応じて対日政策を友好的に変えて、その結果、日中関係はウィン・ウィンになる、というのはまったくの虚説です。中国政府は国家の基本部分で、日本に対しては敵性を内蔵しているからです。





 第一に、中国共産党政権は国際秩序や日本の国家安全保障に関して、日本側の政策を否定しています。さらに中国共産党は日本の罪悪や残虐行為を正してきたという主張により、永遠の一党独裁体制に正当性を与えています。中国の歴史教科書をみても、戦後日本の中国への経済援助の事実は記載していません。しかも日本に消極的平和主義の憲法九条があることを無視して、いまでも日常的に「日本は中国を再び侵略しようとしている」というプロパガンダを発信しています。





兼原 そもそも中国と日本とでは、国際秩序に対する考え方が違います。日本は人種差別や植民地支配を排除し、ソ連を中心とした共産圏が消えた後に現れた地球的規模の自由主義的国際秩序を守ることを国益の中心に据えましたが、中国はその国際秩序を修正しようとする現状打破勢力です。そういう意味では昭和前期の日本に近い。





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