日本外交の診断 兼原元国家安全保障局次長と語る その6 日本学術会議が日本の防衛を嫌う
Japan In-depth / 2022年3月29日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・安全保障と科学技術を切り離した結果、産業技術も軍事技術も廃れ、生産性が上がらない国になった。
・「軍がかかわる」研究に反対する左傾学者は問題。その象徴の「日本学術会議」は罪深い。
・政治にも責任。吉田、中曽根、安倍、菅以外の総理は見て見ぬフリ。経産官僚は国家安全保障の主力官庁だとの自負を持て。
日米同盟反対、自衛隊反対の文脈で軍事研究に反対する。敗戦と冷戦の呪縛です。軍民両用に使われている技術でも「軍がかかわる」と言って反対する。
兼原信克 アメリカは、世界のリーダーシップを中国に渡さないと考えているし、人権擁護という国是があるので、ビジネス界が嫌味を言っても対中強硬路線に舵を切れた。しかし日本の官界は縦割りで、経済界は安保に関心が薄い。結局、最後に優先順位を決めるのは総理大臣しかいません。
幸い安倍政権、菅政権、岸田政権と経済安全保障に関心をもった総理が初めて続きました。岸田政権では、新規立法が検討されています。
古森義久 国家としての意思が統一できない原因を突き詰めると、憲法にまでたどりつきます。憲法によって、安全保障や軍事はこの世に存在しないものだ、という普通ではあり得ないことを普通だと思い込まされた結果、判断力が鈍ってしまった。
兼原 ここで浮上してくるのが学界という存在です。学界の罪は重いですよ。アメリカで研究活動をしている日本人学生が、その研究所にアメリカ国防総省の予算が入った途端に帰国させられます。防衛省から研究基金をもらっている会社と研究をしている大学教授には、協力しないように圧力がかかる。防衛省や米国防総省に出入りする人がいれば、「何を話してきたのか」と問いただします。
古森 学界の誰が指示しているのですか。
兼原 学界全体に敗戦と占領の後、軍事をやらないという方針が沁(し)みついている。
また、冷戦中に左傾化した学者は、日米同盟反対、自衛隊反対の文脈で軍事研究に反対する。敗戦と冷戦の呪縛です。軍民両用に使われている技術でも「軍がかかわる」と言って反対する。年間4兆円という防衛費5兆円にも匹敵する科学技術予算を血税からもらっておきながら、日本の安全や自衛隊員の安全には絶対にカネは使わせないという雰囲気です。その象徴が日本学術会議です。
政府は、科学技術の研究開発予算として年間2兆円を文科省に出しています。そのうち8000億円は科学研究と何の関係もない大学運営費交付金です。今日、どこに8000億円の補助金をもらっている業界があるでしょうか。これに対して防衛省がもらっている研究開発費はわずか2000億円です。これはどう考えてもおかしい。
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