「核共有」議論はよいが…… 「プーチンの戦争」をめぐって その6
Japan In-depth / 2022年3月31日 23時0分
これは、米国の核弾頭を、核武装していない同盟国に配備し、平時には米軍が管理するが、いざ核攻撃となった際には、同盟国の航空機に搭載して使用する、というものだ。
そして、ここが一番の問題点なのだが、使用に関する決定権は米軍だけにある。
このため旧西ドイツは、使用の決定に自国政府が関与できるようシステムを変更して欲しいと幾度も訴えていた。
念のため述べておくと、旧西ドイツがこうした要求をした理由とは、通常戦力において圧倒的な旧ソ連軍に対して、その進撃を止めるには核攻撃しかない、という状況になった場合でも、際限のない報復合戦=全面核戦争に発展することを恐れた米国が使用を躊躇するのではないか、と危惧したらであるとされる。
とは言え、ここでも「逆もまた真」という表現を使わざるを得ないのだが、旧西ドイツの政府や軍上層部が、この状況で核は使うべきではない(もしくは使う必要がない)と判断したような場合でも、米軍が使うと決めたら使う、ということなのだ。このシステムは、冷戦が終結して30年以上経つ今も継承されている。
これでどうして、日本でも核共有を前向きに検討すべきだという「議論」になるのか。前述の非核三原則がありながら、幾度となく「持ち込み疑惑」が浮上した問題とも併せて、安倍元首相のご高説を拝聴したいところである。
そもそも今次のウクライナ侵攻は、かの国がNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、ミサイルや地上部隊が配備される事態を、ロシアが恐れたことから始まっている。侵攻を正当化する考えは微塵もないが、ウクライナが
「核兵器を手放してしまったから、核大国のロシアに攻め込まれた」
という見方は全く的外れである、とは断言できる。
少し歴史を遡れば、1962年10月のキューバ危機とは、キューバが「米国の脅威に対抗すべく」ソ連邦の支援を受けて国内にミサイル基地を建設したことから始まった。この時は米国のジョン・F・ケネディ大統領と、ソ連邦のニキータ・フルシチョフ第一書記が書簡を交わした結果、ミサイルはキューバから撤去され、全面戦争は回避された。
写真)キューバ危機の最中、旧ソ連の貨物船の近くをアメリカ軍の飛行機が飛ぶ。1962年1月1日。
出典)Photo by MPI/Getty Images
この事件の教訓から、ホワイトハウスとクレムリン宮殿をつなぐ直通電話(世に言うホットライン)が開設されたのは有名な話だ。両者とも、最終的には相手を「話せば分かる」という認識に至ったと述べている。
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