ロシア苦戦で焦る金正恩「火星17」発射を偽装か
Japan In-depth / 2022年3月31日 18時0分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・北朝鮮が発射した大陸間弾道ミサイルが日本の排他的経済水域内に落下。
・韓国国防部は、「火星-17型」は偽装宣伝で実際は「火星-15型」だったと発表。
・高度な技術を要する「火星-17型」の発射は失敗したという。
3月24日午後2時34分ごろ、北朝鮮は、米朝首脳会談直前の2018年4月に行った「核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射」の「モラトリアム(凍結)宣言」を破棄して、平壌の順安(スナン)付近から日本海に向けて、「火星-17型」と見られるICBMを、ロフテッド軌道で発射して日本の排他的経済水域(EEZ)内である北海道・渡島半島西方約150キロの海域に落下させた。
このミサイルについて韓国合同参謀本部は、飛行高度は約6200km(過去最高)、飛距離は1080kmで飛行時間は70分ほどだったと発表した。正常な角度で発射したとすれば、射程距離は、米国ワシントンD.C.を打撃可能な1万~1万5千キロだという。
■ 韓国国防部、火星17型発射は偽装発射と発表
ところが韓国国防部は3月27日になって、このICBMの試験発射が新型の「火星-17型」ではなく「火星-15型」を偽装したものとの見方を示した。29日にはそれを公式見解として発表した(朝鮮日報2022・3・29)。
29日に国会国防委員会全体会議に提出した懸案報告資料で韓国国防部は、この偽装発射が、去る3月16日に行われた「火星-17型」発射の失敗を挽回し、内部結束を固めるための目的で「映像を編集」するなどミサイル機種をだまして 発表したと評価した。
北朝鮮は2月27日と3月5日にもICBMの試験発射を行い、3月16日午前9時半ごろにも、平壌の順安(スナン)付近から「火星-17型」と見られるICBMを発射していたが失敗していた。
米国の北朝鮮専門メディアNKニュースは、北朝鮮が16日に発射後、爆発した弾道ミサイルの残骸が平壌近くに落ちたことが写真と証言で確認されたとし、多数の目撃者が巨大飛行機飛行のような「轟音」を耳にし、続いて「グァン」という大きな炸裂音を聴いたと報道した。
■ 3月16日に失敗のミサイル残骸、平壌付近に降り注ぐ
▲写真 北朝鮮のミサイル発射に対する反対デモ(2022年3月26日 韓国・ソウル) 出典:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images
この失敗の状況について、韓国「国民の力」の河議員は3月29日、国防部非公開懸案報告を受けた後、記者たちに「去る3月16日試験発射直後、(ミサイルは)上空で爆発した。 爆発地点が上空数kmだったので、破片が平壌付近に降り注いだ」と話した。「住民の死亡や負傷については確認されなかったが、民間に被害があった」とし「平壌住民が不安におののいた」と明らかにした。 そして、「民心離反、体制不安定化につながる要因をいち早く除去しようとして、あわてて「火星15型」を発射して「火星-17型」と偽装宣伝した」と指摘した。
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