大規模戦争犯罪に発展か 国際法廷のプーチン訴追困難の見方も
Japan In-depth / 2022年4月8日 13時26分
■各国は国際法廷に全面協力
各国は、あらたな制裁などを科す一方、強制力をもつICCに対し、関与した容疑者を処罰することへの要請、期待を強めている。
英国のトラス外相は4月6日、声明を発表、「クレムリンはウクライナでの市民襲撃についてウソを重ね、ニセ情報を流している。ブチャであれどこであれ、戦争犯罪の責任を問うことについてICCを支援する」と述べ、ICCの捜査、訴追に全面協力する姿勢を鮮明にした。
アメリカのサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も訴追に向けて、米国・同盟国の情報機関の活動、ウクライナ自身が集めた情報、国連など国際機関の調査結果、メディアの報道ーを集約、戦犯訴追の証拠とする方針を強調した。
■市民虐殺も訴追対象に
ICC自身は、今回の大量殺人についての方針を明らかにしていないが、同裁判所検事局は、ロシアの侵略直後の2月末から、職権で戦争犯罪に関する証拠集めに着手、3月初めにカリム・カーン主任検察官(英国出身)が捜査を開始する方針を正式に表明している。
今回の事件が明らかになる以前に発表された同検事の声明は、「捜査にはあらたな訴えも含まれる」と述べていることから、市民虐殺も対象に追加される見込みだ。
一方で、英国の法律専門家らによると、実際に残虐行為に関与した者の訴追、とくにプーチン大統領らロシア政府、軍首脳の指示・命令、黙認などを立証するのは容易ではないという厳しい見方も少なくない。
罪もない市民殺人に関与した容疑者を訴追、有罪に持ち込むためには、ICCが訴追対象とする集団殺害(ジェノサイド)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪のいずれかの構成要件を満たす必要がある。
ロシアはICC設置の取り決めを批准しておらず訴追手続きに従う必要がないため、取り調べや、仮にICCが逮捕令状を発行しても、応じることはあり得ないとみられる。
ICCはこれまで、国内紛争などに絡んでコートジボアールの前大統領ら現職を含む3人の政府首脳を訴追したがいずれも有罪に持ち込むことはできなかった。
しかし、最新のテクノロジーを駆使して関係者の携帯電話の通話記録を解析、ベリングキャット(英国の調査報道サイト)など人権監視団体の情報、メディアの報道などを利用すれば、活路を開くことができるとの見方もある。
また、ICC検事局はロシアがクリミアを併合した2014年から、ロシアの戦争犯罪に関わる情報を収集してきたことから、これを活用して、訴追対象の事案を広げる可能性も取りざたされている。
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